香典の渡し方とマナー丨渡すタイミングや状況別にかける言葉も解説

葬儀での香典の渡し方には、特有のマナーがあります。
葬家の宗教・宗派や渡すときの状況によってマナーは異なるので、注意が必要です。
香典は、親しかった方・お世話になった方へお悔やみの気持ちを込めて渡す大事なものなので、できれば失礼のないように渡したいものです。
この記事では、香典の渡し方やマナー、渡すときに添える言葉を紹介します。
さまざまな状況別に解説するので、ぜひ参考にしてください。
香典の渡し方丨基本的なマナー
香典を渡すときのマナーは状況によって微妙に異なりますが、まずは多くの場合に共通する基本的なマナーを抑えることが重要です。
香典を渡すタイミング|記帳を済ませて渡す
葬儀場に受付が設置されている場合、香典は受付で記帳を終えた後に渡します。
通常は、受付の係の人が香典の担当も兼ねているのが一般的です。
記帳を済ませ、香典を取り出して係の人に一礼し、お悔やみの言葉を添えて渡しましょう。
香典の出し方|袱紗に包んで持参するのがマナー
香典は、袱紗(ふくさ)に包んで持参するのがマナーです。
袱紗とは、お金を入れた祝儀袋や不祝儀袋を包む布で、弔事だけでなく結婚式など冠婚葬祭全般で利用します。
香典を渡すときは、まず袱紗に包んだままポケットやカバンから取り出します。
袱紗を右手に載せて左手で袱紗を開けるのが基本的な方法で、袱紗の上に不祝儀袋(香典袋)を載せた状態にしてください。
香典の渡し方|相手に文字が読めるように向きを変える
香典を渡すときは、香典袋の表書きが相手から読める向きになっているかを確認し、両手で丁寧にお渡ししましょう。
イメージとしては、名刺交換と同じように考えると分かりやすいかもしれません。
名刺交換では、名刺を名刺入れに載せたうえで、相手に正しい向きで渡すのがマナーとされています。
香典袋も同様に、相手が読みやすいよう向きを整えて、心を込めて渡すことが大切です。
名刺交換の経験がある方なら、香典袋を「少し大きな名刺」と捉えると、自然な所作で渡せるでしょう。
香典を渡すときにかける言葉
受付で香典を渡すときには、以下のような言葉を添えると良いでしょう。
- 「このたびはご愁傷様でございます」
- 「心よりお悔やみ申し上げます」
- 「心ばかりですがお供えください」
葬儀では、使ってはいけない「忌み言葉」があります。
「重ね重ね」「ますます」などの重ね言葉や「消える」「散る」などの不幸を連想させる言葉はNGです。
また普段何気なく使っている言葉であっても、宗教・宗派によっては避けた方が良い言葉もあります。
たとえば「ご霊前」という言葉は、どの宗教でも使えるとされる一方で、キリスト教のプロテスタントや仏教の浄土真宗にはふさわしくないとする意見もあるようです。
香典を渡すときに「どうぞ、ご霊前にお供えください」というフレーズもよく使われますが、実は注意が必要だといえます。
宗教・宗派に合わせた適切なお悔やみの言葉を伝えましょう。
【関連記事】
浄土真宗でやってはいけないこと16個|お通夜や葬儀・お盆など状況別に解説
香典の渡し方丨状況別
香典を渡す状況によっては、香典袋の書き方やかける言葉を一般的な方法と変える必要があります。
特に、仏教以外の宗教で葬儀が行われるケースでは注意が必要です。
受付がない場合
家族葬のような小規模な葬儀では、受付が設置されていない場合があります。
そのようなケースでは、喪主に直接香典を渡しましょう。
喪主が見当たらない場合や忙しそうにしている場合、葬儀社のスタッフに代わりに渡してもらう方法もありますが、なるべく直接渡したほうが良いでしょう。
自宅葬の場合
最近は減りつつありますが、自宅で葬儀をする場合もあります。
自宅葬でも、受付がある場合は受付で香典を渡すのが基本です。
受付がなければ、喪主に直接手渡すか霊前に供えます。
喪主に手渡すときのマナーは基本通り。
相手から表書きの字が読めるように向きを変えて、お悔やみの言葉と共に渡しましょう。
霊前に供える場合は、自分が読める向きに置きます。
【関連記事】
代理人に依頼する場合
やむを得ず葬儀に参列できない場合は、代理人に香典を託すことも可能です。
その際は、事前に遺族へ代理人が香典を持参する旨を伝えておくと、より丁寧な対応となります。
香典を渡す際には、代理であることをきちんと伝え、必要に応じて依頼人との関係性も簡潔に添えるのがマナーです。
香典袋の書き方
外袋の表書き(上段)は、通常と同じく「御霊前」「御香典」などと記します。
下段には香典を出す本人の名前を書き、その名前の下に小さく「代」と添えます。
なお、配偶者に代理を頼む場合は「代」ではなく「内」と書くのが慣例です。
芳名帳の記入方法
代理人が記帳する際は、まず依頼人(香典を出す人)の名前を記入し、その横に代理人自身の名前を書いて、その下に「代」または「内」と添えます。
連名で香典を出す場合
友人一同や職場の同僚など、複数人で連名の香典を出すことはマナー違反ではありません。
ただし、香典袋の書き方や金額の包み方には注意が必要です。
香典袋の書き方
- 3名までの場合:
香典袋の表書きに、全員の氏名を記載します。
職場の場合は右上に会社名を記し、役職順や年長者順で右から左へ名前を並べます。 友人同士であれば、順番に厳密なルールはありませんが、五十音順が無難です。
- 4名以上の場合:
「○○一同」として代表名の記載にとどめ、全員の氏名は中袋や別紙に記載します。
金額の注意点
連名で出す際も、合計金額に「4」や「9」を含めないように注意しましょう。
例えば、1人1万円で4人=4万円 は「死」を連想させるためNGです。
偶数の金額も「縁が切れる」とされるため避けた方が無難です。
代わりに5千円札を加えるなどして、奇数枚に調整する工夫をしましょう。
【関連記事】
香典で包んではいけない金額とは?料金相場や包み方・書き方のマナーも解説
香典返しへの配慮
連名の場合、遺族が香典返しをどうすればよいか悩むことがあります。
ご遺族の負担を減らすためにも、香典返しを辞退する配慮をすると良いでしょう。
中袋または別紙に「お返しのご配慮は不要でございます」といった一言を添えておきます。
神道の葬儀の場合
神道の葬儀の場合、香典袋の表書きは「御神前」「御玉串料」にしましょう。
そして、香典を渡すときにかける言葉には注意が必要です。
仏教系の葬儀で普通に使われる「冥福」「供養」「仏前」などの言葉は避ける必要があります。
【関連記事】
神式の葬儀“神葬祭”の流れとは?通夜や告別式のマナー・作法も解説
キリスト教の葬儀の場合
キリスト教でも、日本で葬儀をする場合は金銭を渡す習慣があります。
ただし、仏教とは宗教観が異なるため、香典マナーに注意しなければなりません。
キリスト教での香典袋は、白無地か百合の花が描かれているものが適しています。
蓮の花があるものや型押しのある香典袋は、仏教専用なので避けてください。
表書きは、カトリックの場合「御花料」「御霊前」、プロテスタントの場合は「御花料」「献花料」などと書きます。
「御花料」はどちらの宗派でも使えるので、わからない場合は「御花料」と書くと良いでしょう。
渡し方は、仏式の葬儀と同じです。
袱紗から取り出して、表書きの文字が相手側から読めるようにして渡します。
キリスト教では、死は悲しみだけではなく、神のもとへ召される安らぎの旅立ちととらえられています。
そのため、仏教のように「お悔やみ申し上げます」「ご愁傷様です」といった言葉は適しません。
香典の渡し方丨マナー・渡すタイミングでよくある質問
香典を渡す行為は、普段の生活でそれほど多く経験することではないかもしれません。
相手の失礼にならないよう、以下のようなケースも想定しておくと、不慣れな人でも安心です。
通夜と告別式のどちらで渡すべき
通夜と告別式の両方に出席する場合、どちらで香典を渡してもマナー違反にはなりません。
一般的には、先に行われる通夜で香典を渡すケースが多いようです。
もちろん、通夜と告別式の両方で香典を渡す必要はありません。
むしろ、不幸が重なるとしてマナー違反になる恐れがあります。
香典を辞退している場合はどうする
故人の遺言や香典返しの負担を軽減するため、最近では「香典を辞退する」葬儀も多くなりました。
葬家が香典を辞退している場合は、渡さないのが無難です。
どうしてもお世話になった故人にお礼をしたいような場合は、代わりにお供えや供花を贈る方法もあります。
とはいえ、香典とともに供花なども辞退しているケースがあるので、送る場合は事前にご遺族に確認する方が良いでしょう。
袱紗がないときの香典の渡し方
袱紗がないときは、ハンカチや小さめの風呂敷で代用してもかまいません。
むき出しの状態で香典を渡すのは、なるべく避けてください。
ハンカチなら白か黒にして、風呂敷なら派手な色は避けましょう。
袱紗は、弔事ではダークカラー・寒色系を使用するのがマナーです。
参列しない場合の香典の渡し方
参列できなかったけれども香典を包みたい場合、郵送や後日の弔問時に渡すなどいくつかの方法があります。
それぞれの方法についてのマナーを紹介します。
郵送する
葬儀に参列できず香典を渡せなかった場合、郵送で香典を送ることはマナー違反には当たりません。
事情があって葬儀に参列できなかった場合だけでなく、遠方に住んでいる場合などは郵送すると良いでしょう。
郵送で送る場合、現金書留を利用し、必ずメッセージを添えます。
メッセージには、お悔やみの言葉と葬儀に参列できなかったことのお詫びの文章を入れるのがポイントです。
通夜や告別式の日時・場所が決まっている場合、間に合うのであれば葬儀場に送るケースもありますが、確実を期すのであればやはり自宅に送る方が無難です。
葬儀後に弔問して渡す
葬儀後、弔問のために自宅へ行った際に渡す方法もあります。
弔問する場合は、必ず事前に連絡してください。
訪問する時期には配慮が必要です。
葬儀直後は遺族も何かとあわただしい時期なので、葬儀後4~5日以上経ってから連絡を取ると良いでしょう。
自宅への弔問の場合、遺族に直接手渡すか後飾り祭壇・仏壇に供えます。
直接手渡す際にかける言葉は、葬儀で渡す場合と同じでかまいません。
法要で渡す
四十九日法要や一周忌法要で渡すケースもあります。
すでに亡くなってから日にちが経過しているので、挨拶の言葉や香典袋の表書きはそれ以前とは異なります。
ただし四十九日法要までは、それまでと同様に喪服を着用するのが基本的なマナーです。
香典袋の表書きは、仏式の場合、四十九日までは「ご霊前」と書きますが、四十九日を過ぎると「ご仏前」に変わります。
挨拶では、「ご愁傷様です」などのお悔やみの言葉はもう必要ありません。
「御香典です。お供えください」などの言葉を添えましょう。
【関連記事】
家族葬に参列しない時の香典の金額相場は?代わりに弔意を示す方法も解説
香典はお悔やみの気持ちを伝える大事なツール。マナーを守って渡すことが重要
香典は、喪主・遺族に対してお悔やみの気持ちを伝える大事な役割を担っています。
しかし、渡し方が間違っていると、その気持ちは相手に伝わりづらいかもしれません。
故人をしのぶ気持ちをしっかり伝えるためにも、マナーを守って香典を渡すことが重要です。
葬儀に関するお悩みがあれば「家族葬のゲートハウス」へ
家族葬のゲートハウスは、和歌山市の家族葬施行件数No.1の葬儀社です。
経験豊富なスタッフが、丁寧に対応いたしますので葬儀に関することはどんなことでもお任せください。

監修者
木村 聡太
・家族葬のゲートハウススタッフ
・一級葬祭ディレクター
「家族の絆を確かめ合えるような温かいお葬式」をモットーに、10年以上に渡って多くのご葬儀に携わっている。