神道に初盆は無い?祭壇の飾り方・香典やお礼の表書き・仏式のお盆との違いを解説

大切な家族を見送った後、初めて迎えるお盆。
しっかり供養をしたいと思っていても、神式のお盆の経験がないと、何をどのような手順で進めるべきかわからず、悩むことがあるかもしれません。
この記事では、神式の初盆について詳しく解説するので、ぜひ参考にしてください。
神道に初盆は無い?
神道にも、仏教の「初盆」に似た習わしがあります。
仏教では、四十九日を迎えてから初めて迎えるお盆のことを「初盆」または「新盆(にいぼん、あらぼん)」と呼びます。
一方神道では、亡くなった日から1年以内に迎えるお盆のことを「初盆祭」「新御霊祭(あらみたまさい)」と呼ぶのが特徴です。
神道・仏教における初盆の違いについては次の項目で詳しく解説しますが、いずれも亡くなった人を供養するうえで欠かせない大切な儀式です。
神道・仏教の初盆における違いは?
神道は日本古来のもの、仏教は中国由来のものです。
そのため初盆のタイミングや意味合いなど、さまざまな違いがあります。
この項目では神式・仏式の初盆の違いについて解説するので、ぜひ覚えておいてください。
初盆のタイミングが違う
まず異なるのが、初盆のタイミングです。
仏教では、故人が亡くなってから初めて迎えるお盆ではなく、四十九日を過ぎた後初めて迎えるお盆が初盆になります。
たとえば亡くなったタイミングが7月であった場合、仏教の初盆は次の年のお盆です。
一方、神道では初めて迎えるお盆が初盆となるため、7月に亡くなった場合はすぐに初盆を迎えることになります。
また、一般的に神道のお盆は8月13日〜16日とされていますが、一部の地域では異なるため、こちらも事前に確認しておきましょう。
初盆の意味合いが違う
神道と仏教では、初盆に込める意味も少し異なります。
どちらも亡くなった人の供養という点では同じですが、神道では「亡くなった人の魂は神になる」と考えるため、供養だけでなく家族の無病息災を祈るお祝い事の意味も含まれます。
一方、仏教の初盆は「盂蘭盆会(うらぼんえ)」という仏教故事に由来しており、ご先祖様の魂を自宅にお迎えし、感謝をすることが目的です。
お供え物や過ごし方も異なるため、神道の初盆の迎え方は別の項目で確認してください。
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祀る物が違う
仏教では、初盆を迎えるときは仏壇に位牌を祀ります。
一方、神道では「祖霊舎(それいしゃ)」に「霊璽(れいじ)」を祀るのが一般的です。
ちなみに、祖霊舎は仏教の仏壇に当たるもので、初盆を迎える故人だけでなく先祖代々の霊魂が祀られた社のようなもの。
一方、霊璽は仏教の位牌に当たり、表面には故人の名前と諡(おくりな)、裏面には亡くなった年月日と年齢が刻まれています。
お供え物が違う
神道と仏教の初盆において、もう一点大きく異なるのが、お供え物です。
仏教では、一般的に肉や魚などを避け野菜や豆を使った「精進料理」をお供えします。
一方神道では「神饌(しんせん)」と呼ばれる米・酒・餅・鮮魚・野菜・塩・水と、榊(さかき)をお供えします。
また、仏教では生物をお供えするのはタブーですが、神道は特に制限がないため、魚や野菜・果物など、旬のものや故人が好んで口にしていたものをお供えすることも多いです。
その他、故人が好きだったお酒をお供えすることもあります。
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神道の初盆の準備するもの・流れは?
続いては、神道における初盆の具体的な流れを詳しく解説します。
準備すべきものについてもご紹介しますので、神道の初盆を迎える予定がある方は、しっかり確認して初盆に備えましょう。
①神棚・祖霊舎を掃除する
お盆を迎える前に、まずは神棚や祖霊舎の掃除を行います。
いずれも先祖代々の霊魂を祀る大切なものなので、新しい雑巾を使うことが望ましいです。
使い古しの雑巾を使ったり、息を吹きかけてホコリを取ったりすることは避けましょう。
掃除中は神棚のものを直接床に置かず、事前に用意した白い布の上に置くようにしてください。
また、口は人間の汚れの象徴とされているため、掃除をする前には口をすすぎ、心身を清めてから取り掛かりましょう。
②祭壇を作る
掃除が終わったら、続いては祭壇を作ります。
神道では祭壇の中央に祖霊舎を置き、同じ段の少し手前の左右に榊と燭台、その下の段にお供え物を並べるのが一般的です。
また、お供え物には置く順番が決められており、真ん中に1番序列の高いものを、向かって右側に2番目に序列が高いものを並べます。
詳細な飾り方は後ほど解説しますので、詳しくはそちらを参考にしてください。
③白提灯を飾る
神道においても、初盆は故人が迷わずに帰って来られるようにするため、目印として白提灯を飾ります。
仏教では家紋や墨絵が入ったもの、黒檀を使った白提灯を使うこともありますが、神道では白木に無地の白提灯を使うのが基本です。
絵が入った白提灯を使ってもマナー違反にはなりませんが、蓮の花の絵は仏教を連想させるため避けましょう。
また、使い終わったら白提灯は保管せず、お焚き上げなどで丁寧に処分してください。
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④迎え火を焚く
お盆の初日には、迎え火をします。
地域によっても異なりますが、8月13日の夕方ごろから始めるのが一般的です。
「ほうろく」という皿の上で、茎の部分の皮を剥いだ状態の「おがら」と呼ばれる麻を燃やし、手を合わせて故人をお迎えしましょう。
ほうろくは耐熱性の平たいお皿、おがらは割り箸で代用可能です。
また、住宅環境によって迎え火を行うのが難しい場合は、盆提灯を飾りましょう。
⑤お墓参りをする
続いて、故人が眠るお墓へお参りに行きます。
手を合わせる以外にも決められた手順や作法があるため、以下の方法を参考にしてください。
- 1.墓石を水で清める
- 2.榊を供える
- 3.ロウソクを焚く
- 4.米・水・塩を供える
- 5.お墓に二礼二拍手一礼する
神道では、お辞儀を2回、拍手を2回、そして最後にもう一度お辞儀をする「二礼二拍手一礼」が基本的な作法です。
ただ、初盆が四十九日を迎える前なら、音を立てずに手を叩く「しのび手」を用います。
この場合、音を立てるとマナー違反になるため注意してください。
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⑥神主に祝詞(のりと)を奏上してもらう
仏教の初盆法要では僧侶にお経を上げてもらいますが、神道の初盆法要では神主を迎えて祝詞を奏上してもらうのが一般的です。
神主が祝詞を奏上している間か終了後に、法要の参列者は紙垂(しで)のついた榊(さかき)を遺影の前にお供えする「玉串奉奠(たまぐしほうてん)」を行います。
玉串奉奠を終えたら二礼二拍手一礼をするのがマナーですので、こちらも心得ておきましょう。
⑦直会(なおらい)をする
法要の最後は「直会(なおらい)」と呼ばれる会食のような儀式を行います。
仏教の「精進落とし」に似ていますが、神道では祭壇にお供えした神饌を、神主や参列者などの関係者で食べるのが基本的なやり方です。
場合によってはお供え物とは別に、故人が好きだった食べ物を用意することもあります。
参列者へのお礼を伝える場であるほか、日常に戻るための準備という意味や、神様へのお供え物を食べることで力をもらうという意味などが込められている、大切な儀式の一つです。
⑧送り火を焚く
お盆の最後の日は、ご先祖様を見送る儀式として送り火を行います。
こちらも地域によって異なりますが、8月16日の夕方ごろから行うのが一般的です。
やり方は迎え火と同じように、ほうろくの上でおがらに火をつけ、手を合わせます。
送り火を行う場所に明確な決まりはありませんが、基本的には迎え火と同じ場所で行うケースが多いです。
神道の初盆における自宅祭壇の飾り方は?
前の項目でも触れた通り、神道の初盆における自宅祭壇の飾り方には決まりがあります。
まずは専用の祭壇、もしくは自宅にある広めのテーブルを用意し、その中央に祖霊舎を置きましょう。
そして、その少し手前の左右に榊と燭台、さらに手前に神饌を並べます。
神饌には次の通り序列があり、序列が一番高いものを中央に、次に序列が高いものを神様から見て左に並べて行くのが決まりです。
【お供え物の序列】
- 1.米
- 2.酒
- 3.餅
- 4.鮮魚(海のもの)
- 5.乾物
- 6.野菜・果物(山のもの)
- 7.塩
- 8.水
米や塩などは小皿に盛り、お酒は「瓶子」と呼ばれる白い瓶に入れるのが一般的です。
また、それぞれは「三方(さんぼう)」と呼ばれる脚がついた木製の台に乗せてお供えします。
神道の初盆における香典・祭祀料の表書きは?
仏教では僧侶に謝礼としてお布施を渡しますが、神道では神主に謝礼として祭祀料を渡すのが一般的です。
また、仏教と同じように法事に参加する場合は香典も用意します。
それぞれの表書きについて解説するので、間違いがないようにご確認ください。
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香典の表書き
神道の場合、基本的に香典袋の表書きは「御神前」と記載します。
「御玉串料(おんたまぐしりょう)」または「御榊料(おさかきりょう)」と書くこともあるため、覚えておくと良いでしょう。
また、香典袋は白い無地のものを、水引は黒と白、または銀のみ・白のみのものを選ぶのがマナーです。
薄墨は使用せずに濃い墨を使用すること、表書きの下には名前をフルネームで記載することも忘れずに覚えておきましょう。
祭祀料の表書き
祭祀料の表書きは「御祭祀料」や「御礼」と記載するのが一般的です。
そして表書きの下に、名前をフルネームで記載します。
こちらも初盆の香典と同じように、薄墨ではなく濃い墨を使用してください。
また、香典袋は白い無地のもの、水引は黒と白、または黄色と白のものを用意しましょう。
神道の初盆で気をつけるマナーは?
大切な人を供養するためには、しっかりとマナーを守ることが大切です。
続いては、神道の初盆において気をつけるべきマナーについてご紹介しますので、実践できるように押さえておいてください。
服装は平服を着る
神道の初盆では、喪服や礼服を着用する必要はありません。
基本的には平服が好ましいとされています。
ただ、平服といってもカジュアルな服装はマナー違反になるため控えましょう。
黒や白、グレーなどを基調とした、フォーマルな服装を心がけてください。
男性はスーツ、女性は白のワイシャツやダークトーンのスカート、ワンピースなどを着用すると良いでしょう。
地域によってマナーが異なることもあるため、不安な場合は事前に確認しておくのがおすすめです。
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お返しは挨拶状・のし紙を忘れない
法要の参列者からは香典や線香、お供え物などをいただくため、基本的にはお返しが必要です。
お返しは品物のみを送るのではなく、挨拶状やのし紙を忘れずに手配しましょう。
のし紙の表書きは「志」または「初盆志」と記載するのが一般的です。
挨拶状には無事に初盆を終えられたことや、お礼を書面で伝えることに対するお詫びなどを記載すると良いでしょう。
また、お返しは手元に残るものよりも、食品や洗剤などの消えものを送る方が好ましいです。
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神道にも初盆はある。流れや準備で仏式との違いに気を付けること
仏教と同じように神道にも初盆があり、故人を供養するための大切な儀式とされています。
ただ、初盆のタイミングやお供え物、法要の流れなどは、仏式と異なる点も少なくありません。
直前になって慌てたり、当日に混乱したりしないように、あらかじめ違いをしっかりと押さえておくことが大切です。
そして穏やかに初盆を迎え、故人を静かに偲んでください。
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監修者
木村 聡太
・家族葬のゲートハウススタッフ
・一級葬祭ディレクター
「家族の絆を確かめ合えるような温かいお葬式」をモットーに、10年以上に渡って多くのご葬儀に携わっている。