実家じまいとは?かかる費用・手順・片付けのタイミングを解説

家族状況の変化や維持・管理の問題などから、実家じまいについて検討する人が増えています。
しかし「どうやって進めるの?」「どのタイミングで検討すればいい?」など、悩みや不安を感じることもあるでしょう。
この記事では、実家じまいとは具体的に何をするのか、また費用や手順などについて詳しく解説します。
実家じまいとは?家じまいとの違いは?
近年増えている「実家じまい」という言葉を聞いたことがある人は多いでしょう。
似ている言葉として「家じまい」がありますが、その意味や内容は異なります。
まずは、実家じまいとは何なのかについてチェックしてみましょう。
実家じまいの意味
実家じまいとは、子どもが実家を整理して処分することを指します。
実家とは自分が生まれ育った家、つまり親の家のことです。
近年では核家族化が進み、親が亡くなった後の空き家が問題になっています。
残された子どもは空き家の維持管理を続けるか、解体、売却、賃貸に出すなどの選択肢がありますが、いずれにしても大きな決断をしなければなりません。
実家じまいは、家族の形態やライフスタイルが変化した今の時代を表しているといえるでしょう。
家じまいとの違い
家じまいとは、自分が住んでいる家を自分で整理して処分することです。
親が住まなくなった家を子どもが処分する実家じまいに対し、家じまいは家主が自分自身で持家を処分します。
一般的には高齢になった所有者が、生前整理や終活の一環で行うケースが多いでしょう。
「家じまい」と「実家じまい」は似ていますが、誰がどのタイミングで行うのかが大きな違いになります。
実家じまいが増えた理由
実家じまいが増えている背景に、高齢化があげられます。
高齢化によって親から子どもへ相続する機会が増えたことに伴い、所有者不明の土地も増えており、相続による登記が義務化されたことも理由の1つです。
これまで、相続登記の手続きは任意とされていました。
しかし、2024年に不動産登記法が改正されて、正当な理由なく登記しなかった場合は罰則を受ける可能性が出てきたのです。
そのため罰金を科せられる前に、はやめに実家じまいをする人が増えていると考えられるでしょう。
実家じまいをするタイミング
実家じまいをするタイミングとしては、親が介護施設に入居する時、管理が負担に感じられた時、相続が発生した時に多い傾向があります。
ここでは、それぞれのタイミングについて詳しく確認してみましょう。
親が介護施設に入居する時
実家じまいをするタイミングとして、親が介護施設に入居する時があげられます。
親が引っ越し、空き家になってすぐのタイミングは、比較的家の中の片付けを始めやすい時期です。
また実家じまいをすることで、施設の入居資金や月額利用料に充てることもできます。
しかし、親が存命中に実家じまいをすることに抵抗があったり、親の気持ちもあってなかなか進められなかったりするケースもあるでしょう。
実家の管理が負担になった時
実家の管理が負担になったタイミングで、実家じまいを決める人も多いです。
実家が遠方で頻繁に通えなかったり、物が多くて片付けが進まなかったり、空き家の維持管理に肉体的・精神的な負担を感じることもあるでしょう。
実家を残していた理由にもよりますが、まずは家族で話し合い、問題点を共有すると先々の見通しが立ちやすくなります。
不動産会社や整理業者など、専門家に相談してみるのも1つの方法です。
相続が起こった時
相続が起こった時に、実家じまいをするケースもあるでしょう。
相続とは、亡くなった人から現金や不動産などの財産を引き継ぐもので、その中には故人の家も含まれます。
相続の際には、相続登記や遺産分割協議書の作成などが必要となるため、司法書士や弁護士などの専門家に相談するのがおすすめです。
相続税の支払いもあるため、相続人になった際は早めの行動が大切になります。
実家じまいにかかる費用
実家じまいには不用品回収や売却時、解体時などに費用がかかります。
ある程度まとまった金額が必要になることもあるので、事前に必要な費用について把握しておきましょう。
不用品回収・処分にかかる費用
実家じまいでは、いらない物を処分する際の不用品回収に費用がかかります。
自分で処分する場合は、粗大ゴミに出したり、処分場に持ち込んだりすることで、数千〜数万円ほどに収まるでしょう。
まだ使える物や価値のある物は、リサイクルショップなどに買い取ってもらうのもおすすめです。
遺品整理を専門業者に依頼する場合は、物量や家の間取り、立地条件などにもよりますが、30坪ほどの一戸建てだと20万〜30万円が相場と言われています。
複数社から見積もりをとり、比較しながら検討すると良いでしょう。
売却にかかる費用
実家を売却する際にも費用がかかります。
不動産と契約して、家の売買が成立した場合は、仲介手数料が必要です。
仲介手数料は「物件価格の3%+6万円+消費税」が一般的で、たとえば1,000万円で売却すると、手数料として39万6,000円を支払うことになるでしょう。
ただし、成約金額などによっても変動するため、詳しくは不動産会社に相談してみてください。
解体にかかる費用
実家を解体する場合には、解体費用が発生します。
家が老朽化しているのであれば、建物付きで販売するより、解体して更地にした方が売却しやすいかもしれません。
一般的な木造住宅は1坪当たり3万〜5万円が相場といわれますが、立地条件によっては重機の搬入が難しいなどの理由から、解体費用が1.5〜2倍ほどかかるケースもあります。
不動産会社と相談しながら、解体にかかる費用とメリットを比較して判断しましょう。
【関連記事】
実家じまいの費用は?片付け・処分・解体はいくら?補助金や手順も解説
実家じまいの費用で注意すること
実家じまいでは、費用に関することで注意しておきたいポイントがあります。
知っているのと知らないのでは、最終的な支払い額に大きな差が出る可能性も。
あとで後悔しないためにも、事前に注意点を把握しておきましょう。
空き家は相続時に3,000万円控除の特例がある
相続した実家が空き家の場合は、売却する際に最大3,000万円が控除される特例があります。
この特例は、相続開始直前まで被相続人(親)が住んでいた家屋であること、被相続人が介護施設などに転居してから賃貸として利用していない場合が対象です。
特例の対象
- 1981年5月31日以前に建築されていること
- 区分所有建物登記がされている建物でないこと
- 相続開始の直前に被相続人以外が居住していなかったこと
特例の適用を受けるための要件
- 売却した人が相続人本人であること
相続または遺贈(死因贈与を含む)で家や土地を取得した相続人(または包括受遺者)自身が売却していること。 - いずれかの方法で売却していること
a.耐震性のある家屋または家屋+敷地を売った
b.家屋を解体後に敷地を売った
c.売却後、翌年2月15日までに耐震改修または解体をした(※令和6年1月1日以後の譲渡限定)
※売却前後で「居住・貸付・事業用」に使用していないことが必要 - 相続開始から3年を経過する年の12月31日までに売却していること
- 売却代金の合計が1億円以下であること
- 他の譲渡所得控除(取得費加算や収用特例など)を適用していないこと
- 同じ家・土地について過去にこの特例を使っていないこと
- 売却先が「特別の関係がある人」ではないこと
親子・夫婦・同居親族・生計を一にする親族・内縁関係の人・特殊関係法人などは対象外
この特例には細かい条件が多いため、売却を検討する際は不動産会社などの専門家に相談してみましょう。
参考:国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
契約書がないと譲渡所得税が高くなる
実家じまいをする時に、契約書がないと譲渡所得税が高くなるので注意してください。
不動産を売却する際に、購入時よりも高く売れて利益が出ると、譲渡所得税が課されます。
譲渡所得税の税率は不動産の所有期間によって定められていますが、購入時の契約書や領収書などを紛失してしまうと、売却価格の5%しか取得費として認められません。
そのため、残りの95%すべてが課税対象になるのです。
譲渡所得税が高額にならないためにも、家を購入した際の契約書をはじめとした証明書類は大切に保管しておきましょう。
参考:国税庁「土地や建物を売ったとき」
参考:国税庁「No.3258 取得費が分からないとき」
相続税が高くなる時期がある
相続税の負担が時期によって変わる可能性があることも、実家じまいで気を付けておきたいポイントです。
不動産を相続する際、その評価額は相続開始時点の国税庁が定める「相続税路線価」などを基に算出され、一般的に市場価格の8割程度となるケースが多いとされています。
ただし、相続前に不動産を売却して現金化した場合、その現金は「時価」で評価されるため、不動産の相続よりも財産評価が高くなる可能性があります。
また、生前贈与を活用する際にも、相続開始前7年以内の贈与は相続財産に加算されるなど、タイミングによって相続税が増えることも。
実家じまいでは、家を売却する時期についても慎重に判断してください。
実家じまいの手順・流れ
実家じまいのプロセスに不手際があると、家族間でトラブルに発展したり、自分の選択に後悔したりする可能性があります。
実家じまいをはじめる前に、手順や流れについて、きちんと確認しておきましょう。
家族でしっかり話し合う
実家じまいを進めるにあたり、家族でしっかり話し合うことが大切です。
存命であれば、まずは親の気持ちを尊重しましょう。
実家を処分するべきだと思っていても、家族の中に1人でも反対している人がいれば、無理に推し進めるべきではありません。
家族関係がこじれると、わだかまりが残り、後々相続でトラブルになる可能性も。
お互いの意向を確認しながら、納得できるまで話し合いを重ねてください。
親の引っ越し先を決める
親が存命のうちに実家じまいをするのであれば、親の引っ越し先を決める必要があります。
高齢者向け住宅や介護施設への入居、家族と同居するなど、親の気持ちや家族の事情などで選択肢は変わるでしょう。
いずれにしても、親が今後も安心して暮らせる環境を選ぶようにしてください。
不用品の回収・片づけをする
親の転居が終わったら、不用品の回収と片付けをします。
親が元気であれば終活の一環として、親の意向を尊重しながら一緒に整理を進めても良いでしょう。
すでに亡くなっているのであれば、相続人で形見として遺したいものを分けて、不要になったものを処分します。
自己判断で勝手に捨ててしまうと後々トラブルになるかもしれないので、実際の作業には家族にも協力してもらうのが望ましいでしょう。
実家の片付けには時間、労力、気力が必要なので、遺品整理を行う業者に依頼するのも選択肢の1つです。
【関連記事】
形見分けとは?いつする?迷惑にならない・トラブルを避ける方法を紹介
実家をどうするか決める
実家じまいでは、空き家になった実家をどのように処分するか決めます。
主に解体して更地にする、建物付きで売却する、賃貸に出すという選択肢が考えられるでしょう。
それぞれメリット・デメリットがあるため、家族とよく話し合って決めてください。
どうするべきか迷ったときは、信頼できる不動産会社に査定を依頼すると、今後の方向性が見えてくるかもしれません。
解体する
実家を解体すると、維持や管理にかかる手間が省けます。
空き家のメンテナンスの必要がなく、老朽化による倒壊などのリスクも軽減できるでしょう。
また建物が古い場合は、解体して更地にした方が買い手が付きやすいというメリットも。
解体する場合は行政への手続きを行い、近隣住民への配慮も忘れないようにしましょう。
ただし、建物を解体する際に解体費用がかかること、また更地にすると固定資産税が最大6倍になってしまう点には注意が必要です。
売却する
空き家になった実家をそのままの状態で売りだすことを、現状売却といいます。
現状売却のメリットは、築年数が古くてもリフォームや修繕などにかかる時間や費用を抑えて現金化できることです。
相続の際に遺産を分割しやすく、実家が遠方で通うのが大変な人にも適しています。
しかし、現状売却は価格がやや低くなる傾向があり、立地や建物の状態によっては、なかなか買い手がつかない可能性もあるでしょう。
賃貸にする
実家を賃貸に出す方法もあります。
リフォームやクリーニングで室内をきれいに整えて賃貸にすることで、自身の不動産として所有しながら、定期的な家賃収入を得られるでしょう。
賃貸経営には専門知識が必要なので、検討する際は不動産会社のプロに相談してみてください。
デメリットとしては、修繕などを含めた事前準備や管理に手間がかかること、入居者がいなければ家賃収入は得られないことなどがあげられます。
実家じまいが寂しいと感じる理由
実家が空き家になっている場合は、いつかは処分しなければなりません。
「このままでは良くない」「どうにかしないと」と分かっていても、なかなか手が付けられないこともあるでしょう。
ここでは、実家じまいが寂しいと感じる理由を解説します。
家族との思い出の場所だから
実家じまいが寂しいと感じるのは、家族との思い出が詰まった場所だからかもしれません。
幼少期や思春期を過ごし、社会人になってからも住み続けた人もいるでしょう。
長い間生活した家には、一緒に暮らした家族との思い出もたくさんあるはずです。
特別な場所を処分するので、寂しく感じたり、気持ちの整理が難しかったりするのは当然のことでしょう。
しかし、たとえ実家を手放しても、家族との大切な思い出そのものが消えるわけではないことを心に留めておきたいですね。
生まれ育った証が消えそうだから
実家じまいをすると、自分が生まれ育った証が消えてしまうような気がすることもあるでしょう。
実家は、ただ住んでいた場所ではなく、これまで生まれ育ってきた特別な場所です。
処分してしまうと、自分の歴史が途絶えてしまう感覚になるかもしれません。
しかし、家屋がなくなっても、今までの記憶や経験は自分のルーツとなり、次の世代に引き継がれていきます。
これまでも、これからも、家族との絆はつながっていると思えば、寂しい気持ちも和らぐのではないでしょうか。
帰る場所がなくなるから
実家じまいで育った家を処分すると、帰る場所がなくなるため、喪失感を抱くかもしれません。
進学や就職のタイミングで実家を出て、独り立ちしてからも「帰る場所がある」という思いで、今まで頑張ってこれた人もいるでしょう。
実家が心の拠り所になっていた人にとって、実家じまいは精神的につらいものです。
新しい生活に向き合い、自分のペースで気持ちの整理ができると良いですね。
実家じまいでよくある疑問
実家じまいを始める時や、進めていく中で疑問に思うこともあるでしょう。
特に、補助金の制度や仏壇の処分などは、気になる人も多いかもしれません。
それでは最後に、実家じまいでよくある疑問について解説します。
実家じまいに補助金はあるの?
実家じまいでは、空き家に適用される補助金の利用が可能です。
近年空き家問題は深刻化しており、各自治体が空き家に関する補助金や助成金制度を整備しています。
制度の内容や適用条件は自治体によって異なりますが、解体工事にかかる費用の一部が支給されたり、家財処分やリフォーム費用を補助してもらえたりするところもあります。
利用できる補助金がないか、実家のある自治体の窓口に問い合わせてみましょう。
仏壇はどうすればいい?
実家じまいで、仏壇の処分に困る人は多いかもしれません。
処分する際は、魂抜きという供養を行い、仏壇に宿ったご先祖様の魂を抜きましょう。
魂抜きをした仏壇はただの箱になるため、粗大ごみとして処分することもできます。
「供養していても、そのまま捨てるのは気が引ける」「大きい仏壇を自分で運び出すのは難しい」という場合は、葬儀屋や仏具店、遺品整理業者などのプロに相談するのがおすすめです。
実家じまいとは子どもが実家を整理・処分すること
実家じまいとは、子どもが親の家、つまり実家を整理・処分することです。
生まれ育った家を手放すのは寂しいかもしれませんが、維持や管理に負担を感じたり、相続が発生したりしたときは、実家じまいについて考えるタイミングかもしれません。
親の気持ちを大切にしながら、家族とよく相談した上で、後悔しない決断をしたいですね。
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監修者
木村 聡太
・家族葬のゲートハウススタッフ
・一級葬祭ディレクター
「家族の絆を確かめ合えるような温かいお葬式」をモットーに、10年以上に渡って多くのご葬儀に携わっている。