エンゼルケアとは?目的・手順や死後処置を依頼する費用と注意点を解説
エンゼルケアについて「聞いたことはあるけれど、実際には何をするの?」「どんな目的で行われるんだろう?」と思っている人もいるかもしれません。
この記事ではエンゼルケアについて、手順や依頼するときの注意点などを詳しく解説します。
エンゼルケアとは
大切な人との最期のお別れの際に行われる、エンゼルケア。
葬儀を手配する流れの中で、はじめて聞いたという人もいるかもしれません。
言葉を知っていても、具体的な意味については分からなかったり、湯灌と同じだと思ったりしていることもあるでしょう。
まずは、エンゼルケアの意味や湯灌との違いについて解説します。
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「エンゼルケア」の意味とは
「エンゼルケア」とは、亡くなった人に行われる死後処置を意味する言葉です。
できる限り生前の印象に近い姿で旅立てるように死化粧を施すなど、見た目を整える内容も含まれています。
はっきりとした定義はありませんが、故人の尊厳を守るため、また残された遺族の心のケアのために行われます。
湯灌との違いとは
湯灌(ゆかん)とは、ぬるま湯で故人の身体を拭き清める儀式のことで、かつては家族や近所の人で行う風習がありました。
現在は特殊な道具や技術を用いて、納棺師などの専門スタッフによって行われるケースがほとんどです。
一方、エンゼルケアでは死後処置の一環として、濡れたタオルなどで全身を拭く「清拭(せいしき)」が行われます。
湯灌は故人を拭き清める儀式であるのに対して、エンゼルケアでは清拭に加えてメイクを施すなど、生前の姿に近づけるという点が違います。
エンゼルケアの目的とは
エンゼルケアは、故人の代わりに身支度をしてきれいな状態に保つこと、感染症を防ぐこと、また残された家族の心をケアすることを目的に行われます。
それぞれ詳しくチェックしてみましょう。
ご遺体をきれいに保つ
まず、エンゼルケアの目的として、ご遺体をきれいに保つことが挙げられます。
病院での長い闘病生活を送っていた場合、着替えや入浴が十分にできていなかったり、点滴やチューブなどの医療器具が取り付けられたりしているかもしれません。
エンゼルケアでは、自分で身なりを整えることができない故人に代わって身支度を行い、亡くなった人の尊厳を守ることを目的としています。
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感染症を予防
エンゼルケアには、感染症を防ぐという目的もあります。
死後直後から人間の身体は腐敗が始まり、時間が経つにつれて体内では細菌が増殖していくのです。
このとき最期の時間を過ごす家族や、葬儀会社のスタッフなどに、ご遺体から漏れ出た体液や血液が付着してしまうと、感染症を引き起こすリスクがあります。
感染症予防という観点からも、専門知識を持ったプロによるエンゼルケアは必要なのです。
ご家族の心のケア
エンゼルケアは亡くなった方のためだけでなく、残された家族の心のケアも目的としています。
大切な人を苦しい表情のまま送り出すのは、とても悲しく、耐えられないと感じる人も多いでしょう。
すぐに受け入れられなくても、エンゼルケアによって生前の元気だった頃の姿に近づけることで「自分にできることはやってあげられた」「最期にきれいにしてあげられた」と、気持ちの整理につながります。
エンゼルケアは誰がする?
エンゼルケアを施すために、必要な資格はありません。
そのため誰が行うかについても、はっきりとは決まっていないのです。
故人が亡くなった場所や状況によって変わりますが、基本的には家族ではなく、看護師や介護士、葬儀社スタッフなどの専門知識がある人にお願いすることが多いでしょう。
看護師・介護士
病院で亡くなったときは、看護師などの医療従事者によって行われるケースが多いです。
エンゼルケアは医療行為ではありませんが、医療器具の取り外しには専門知識や技術が必要不可欠なので、医師または看護師によって行われます。
介護施設で亡くなった場合は、介護士によって処置が施されることもあるでしょう。
遺族が希望すれば清拭や着替えに参加できることもありますが、排泄物の処理や身体の消毒などはプロに任せる場合がほとんどです。
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葬儀社・納棺師
エンゼルケアが行われていない病院や、自宅で息を引き取られた場合は、葬儀社や納棺師などの専門スタッフに任せます。
病院や介護施設のエンゼルケアで行われる内容とは違い、生前に近い姿で旅立てるように専門的な処置が施されるものです。
ケア内容やどこまでやるのかは葬儀会社によって異なるので、相談する際にしっかり確認しましょう。
エンゼルケアの手順とは
エンゼルケアが、どのような流れで施されるのか気になる人も多いのではないでしょうか?
手順や細かい内容については病院や葬儀社などによって異なりますが、ここでは一般的なエンゼルケアの手順について紹介します。
医療従事者による処置
医療従事者によるエンゼルケアの処置は、医療器具の除去、目・鼻・口・排泄物の処置、綿詰めまでが行われます。
まず医療器具を取り外して、身体に傷があれば縫合などで処置されるでしょう。
次にご遺体から臭気が出るのを予防するために、胃の内容物や排泄物を取り除き、口腔ケアを行います。
目や鼻の汚れも取り除いたあと、鼻や耳などの孔に綿詰めをしますが、近年では綿ではなく専用のゼリーが使われるケースも多いようです。
清拭(せいしき)
エンゼルケアで行われる清拭(せいしき)とは、ご遺体を拭いて清潔を保つ処置のことです。
お湯で濡らしたタオルを使って、皮膚を傷つけないように全身を優しく拭きます。
亡くなった人の身体は乾燥しやすいので、きれいに拭き上げたあとは乳液やクリームなどの保湿剤で保湿するのが一般的です。
清拭は病院や業者などの専門スタッフによって行われますが、遺族が参加できることもあるので、希望する場合は尋ねてみましょう。
整髪
エンゼルケアでは、整髪も行われます。
洗髪が必要な場合は、お湯で濡らしてリンスインシャンプーを使うか、ドライシャンプーでケアします。
ドライヤーを使ってブローする際には、頭皮や顔が乾燥しないように気を付けましょう。
髪が乾いたら、ブラッシングで自然な髪型にセットします。
男性は電気シェーバーで髭を剃り、剃ったあとは温かいタオルでシェービングフォームを拭き取って、クリームなどで保湿してください。
着替え
エンゼルケアでは、故人が着ていた患者衣やパジャマなどから白装束へ着替えが行われます。
ただし宗教や宗派によっては白装束を着せないこともあるため、あらかじめ菩提寺や親族などに確認しておきましょう。
特に決まりがない場合は、希望すれば生前お気に入りだった洋服に着替えることもできます。
エンゼルメイク
整髪や着替えができたら、自然な顔色にみせるエンゼルメイクを行います。
クレンジングや保湿などを含めて専門スタッフが行うことが多いですが、希望すれば家族も一緒にケアできるケースもあるでしょう。
故人が愛用していた化粧品を使ったり、化粧の色味について相談したりすることもできます。
ウィッグやヘアピースなどを使いたい場合は、あらかじめ準備しておきましょう。
手を整える
エンゼルケアでは、最後に手のポーズを整えます。
基本的には、故人の爪が伸びている場合は短くカットして、手を胸の前で組むような体勢です。
合掌バンドという道具を用いて、合掌の形に固定するケースも。
しかし、最近では手を組んだり合掌したりせず、自然な手のポーズに整えることが増えつつあります。
エンゼルケアにかかる費用
エンゼルケアにかかる費用の相場は、数千円〜数万円と幅が広いです。
葬儀社によってはエンゼルケアと湯灌がセットになっている会社もあり、どこまで処置するかによっても料金が大きく変動します。
一般的には必要最低限であれば安く、特殊なオプションなどを追加すれば高くなる傾向があるでしょう。
葬儀社によって金額設定が大きく変動するので、予算やどこまで処置してほしいのかを伝えながら相談するのがおすすめです。
エンゼルケアを依頼する際の注意点とは
エンゼルケアは、残された家族が大切な人にしてあげられる最期のケアです。
お別れで悔いが残らないためにも、あらかじめ注意点もしっかりチェックしておきましょう。
それでは最後に、エンゼルケアを依頼する際の注意点を紹介します。
処置にかかる費用・契約内容の確認
エンゼルケアの処置にかかる費用や契約内容は、よく確認しておきましょう。
葬儀会社によって費用が変わるのはもちろん、ご遺体の状態やどこまで処置するかによっても料金が変わります。
疑問な点については適宜質問し、自分たちが納得できる内容で契約することが大切です。
医療処置は専門家に任せる
エンゼルケアにおいて、医療処置は専門家に依頼しましょう。
エンゼルケアは治療行為ではありませんが、処置の際には専門知識や技術が必要不可欠です。
素人が行うと遺体を傷つけたり感染症のリスクが高まったりするので、自分たちでやろうとせず、必ずプロに任せてください。
故人・家族の希望は事前に相談
エンゼルケアを行う前に、故人や家族の希望について話し合っておくことも大切なポイントです。
全ての処置終了後に、最初からやり直すのは難しいこともあります。
「もっとこうしてあげればよかった」「あれもやってあげたかった」という後悔が残らないように、ちょっとした希望も相談するようにしましょう。
エンゼルケアとは故人の尊厳を守り、感謝の気持を表現する時間
エンゼルケアとは、故人の尊厳を守るために行われる大切な処置のことです。
大切な人を失った遺族の心のケアや、感染症予防の観点からも必要になります。
ケア内容や費用は依頼先によって大きく変動するので、事前に確認しておきましょう。
あたたかな家族葬をお約束する家族葬のゲートハウスでは、エンゼルケアに関するご相談にもお答えしています。
ぜひお気軽にお問い合わせください。
監修者
木村聡太
家族葬のゲートハウススタッフ
「家族の絆を確かめ合えるような温かいお葬式」をモットーに、10年以上に渡って多くのご葬儀に携わっている
・一級葬祭ディレクター