初盆をしないとどうなる?宗教別の考え方や新盆をしない場合の代替案を解説

故人が亡くなって初めて迎えるお盆「初盆(新盆)」は、多くの家庭で大切にされてきましたが、近年では「初盆をしない」という選択をする人も増えてきました。
初盆をしない理由はさまざまですが「初盆をしないとバチが当たるのでは?」「親戚や地域との関係は大丈夫?」といった不安を抱える人は少なくありません。
本記事では、初盆をしない場合に考えられる影響や、無理なく供養するための対応策をわかりやすく解説します。
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初盆をしないとどうなる?考えられる影響は?
忙しさや経済的な事情から初盆を行わなかった場合、菩提寺や親族との間でトラブルが生じたり、「やはりやっておけばよかった」と後悔したりすることも考えられます。
初盆は、故人を偲ぶだけでなく、遺された家族が気持ちの整理をするための大切な行事です。
そのため、たとえ簡素な形であっても、手元供養などを行うことで、心の区切りをつけやすくなるでしょう。
どのように初盆を迎えるべきかすぐに決められない場合は、家族とよく話し合いながら、方向性を見つけていくことが大切です。
菩提寺との関係に影響がでる可能性がある
初盆は仏教における重要な供養行事のひとつであり、菩提寺がある家庭では、初盆法要を通じて故人を供養すると同時に、僧侶との信頼関係を深める意味も含まれています。
そのため、菩提寺があるにもかかわらず初盆を行わない場合、僧侶やお寺との関係に悪影響を及ぼすおそれがあります。
お寺側も初盆を迎える家庭に向けて事前の準備を進めていることが多いため、直前になって「初盆は行わない」ことを一方的に伝えると、それまで築いてきた関係にひびが入る可能性も否めません。
一度気まずさが生じると、今後の法事・法要やお墓参りにも足を運びづらくなる方もいるでしょう。
そのような事態を避けるためにも、菩提寺がある場合はできるだけ早めに相談しておくことをおすすめします。
親族・地域とトラブルになる可能性がある
初盆には盆提灯を飾り、親族が集まって法要をするのが慣例となっているような地域では、初盆を重要な行事と考えている人も多くいます。
そういった地域では、案内状を送らず「初盆法要(新盆法要)をしない」と伝えなかった場合、親戚から批判される可能性もあるため、注意が必要です。
また、初盆には葬儀に参加できなかった人や故人の訃報を後から知った人が自宅に訪問することがあります。
さらに、家族が初盆をしない意向であっても、親戚や友人から提灯やお供えの品物が送られてくることも珍しくありません。
そのため、仏前にお参りしたいと思っている人や親族の気持ちを尊重したうえで、初盆をしない理由を丁寧に説明しなければならないでしょう。
精神的・感情的な影響
故人を大切に想っている人ほど、法要などを省略することに対して後ろめたさを感じやすいものです。
他の家族や関係者に対する申し訳ないという気持ちが精神的なストレスになってしまうこともあります。
また、形式的な初盆をしないことを親戚などに批判された場合、後になって「やはりしておけばよかった」と後悔するかもしれません。
初盆法要は供養としての重要な儀式でもありますが、遺族が精神的に区切りをつけるためでもあります。
初盆をするかしないかを迷っている場合は、後悔しないように他の家族ともよく相談しましょう。
初盆を「しない」という選択は可能?
初盆法要自体は、法律や宗教上の義務ではないため、初盆をしないという選択は社会的にも認められており、現代では珍しいことではありません。
宗教的な観点から見ても、供養の方法に厳密な形式を求める必要はないとされており、初盆を行わなかったからといって罰が当たるようなことはないとされています。
また、沖縄など檀家制度のない地域では、家族のみでお盆を過ごし、特別な法要などを行わない家庭もあります。
ただし、初盆法要を盛大に行う慣習がある地域では、親族や近隣住民との関係を気にする必要があり、適切な説明や対応が重要です。
宗教・宗派的観点からの解釈
仏教における初盆は、追善供養の一環として位置付けられますが、宗派によって法要の必要性や重要度が異なります。
宗派別の初盆に関する考え方を見ていきましょう。
浄土真宗の初盆の考え方
浄土真宗(本願寺派・大谷派など)では、初盆を特別な法要とは位置付けていません。
故人は亡くなった直後に阿弥陀如来のもとで成仏していると考えられているため、お盆や初盆についても「故人の霊が帰ってくる」といった捉え方はされていないのが特徴です。
提灯や供物も必須ではなく、日々の念仏がもっとも大切だとされています。
あくまでもお盆は仏縁を深める機会とされており、歓喜会(かんぎえ)と呼ばれる法要に参加する家庭もありますが、初盆をしないこと自体に問題はありません。
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その他の宗派の初盆の考え方
浄土真宗以外の曹洞宗・臨済宗・真言宗・日蓮宗などでは、お盆は先祖が家族のところへ帰って来る時期とされており、初盆を大切な追善供養と考え、初盆法要を行うことが一般的です。
具体的な実施内容や重要度は宗派によって異なりますが、初盆法要は僧侶を招いて読経してもらい、盆棚を用意して故人を迎えるなど、伝統的な供養を大切にする家庭も珍しくありません。
また、初盆を迎える家を対象に、先祖供養もかねて「施餓鬼法要(供養)・盆施餓鬼」をお寺にて合同で行うこともあります。
どうしても初盆ができない場合の代替案・対応策
さまざまな事情で初盆をやりたくてもできない場合もあります。
事情によって代替案も違いますので、詳しく見ていきましょう。
時期をずらして法要を行う
仕事などでお盆の時期に都合がつかない場合は、親族やお寺に相談して時期をずらして初盆法要(新盆法要)を行うことも可能です。
初盆法要そのものは、7月や8月のお盆の時期に合わせて行われるのが一般的ですが、関係者の理解が得られれば、別の日に実施しても差し支えありません。
また、初盆と一周忌が近い場合には一周忌を優先するのが一般的ですが、日程が重なるようであれば、併せて執り行うという選択も可能です。
初盆法要をずらすのならば前倒しが望ましいですが、四十九日後すぐに初盆を迎える場合などは、初盆法要を翌年にずらすこともあります。
自宅で簡素な供養をする
経済的な事情や高齢などで法要の手配が難しい場合には、僧侶の読経を省略し、自宅で盆棚を用意して簡素な形で供養するという選択もあります。
基本的には、盆棚・精霊棚(しょうりょうだな)を設け、仏壇の前に香(線香)、花、灯明(ろうそく)、飲み物、食べ物の五供(ごくう)を供え、故人が迷わず帰ってこられるように白提灯を目印として飾るのが一般的です。
それが難しい場合でも、仏壇やお墓を掃除したり、仏壇や遺影の前で手を合わせたりすることだけでも立派な供養になります。
その他、迎え火や送り火、ごちそうの用意なども、無理のない範囲で行うとよいでしょう。
近年はお盆用のミニ提灯やコンパクトな仏具も多く販売されており、自宅供養でも負担になりにくい形での用意も可能です。
初盆をしない場合の注意点
家族と相談のうえ、初盆をしないと決めた場合には以下の点に注意してください。
地域や宗派の慣習を確認する
初盆をしない場合でも、地域や宗派の慣習を無視すると、地域の方や親族との間でトラブルに発展する可能性があります。
特に、お盆の風習が深く根付いている地域では、今でも「初盆には僧侶を招き、親族が一同に集まるのが当然」と考える人も少なくありません。
不要な摩擦を避けたいときは、関係者へ早めに意思を伝え、簡素でも精霊棚を準備しておくのが望ましい対応といえるでしょう。
親族やお寺には早めに連絡する
初盆をしないと決めたら、親族や近しい関係者には早めに「今年は初盆法要をしない予定です」と案内をしておきましょう。
香典や供物を辞退する場合は、その意思を明確に伝えます。
突然の来客を想定しておく
お盆の時期は、法要がないと伝えていても、お墓参りのついでに自宅を訪れる人がいるかもしれません。
喪服を用意する必要はありませんが、清潔で落ち着いた色味の服装を心がけ、最低限のお茶やお菓子を用意しておくと安心です。
香典や供物を辞退していても、持参した人がいた場合は供物だけでも受け取るのがスマートです。
供物を頂いた場合はお礼と、場合によっては返礼品の用意も検討しなければなりません。
「初盆をしないと罰があたる」ということはない。家族が納得できる形で供養を
「初盆をしないと罰が当たる」「故人が成仏できない」といった迷信めいた話を耳にすることもありますが、実際にはそのような宗教的な教えはありません。
大切なのは、形式にとらわれず、自分たちの生活や心情に合った形で供養することです。
地域の風習にならいつつも、それぞれの家庭事情や価値観、無理のない範囲で判断し、自分たちに合った供養の形を選んでいきましょう。
どうしても判断に迷うときは、菩提寺の僧侶や信頼できる親族に相談するのがおすすめです。
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監修者
木村 聡太
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