死装束とは?襟を左前にするのはなぜ?読み方や意味・着せ方を解説
故人が旅立つときに着る死装束。
古くから伝わる死装束の着用は、故人が安らかにあの世へ向かうために、重要な役割を果たしています。
この記事では、死装束の意味を紐解き、読み方や着せ方についても解説します。
死装束とは?読み方や意味は何?
死装束とは、亡くなった人が身に着ける特別な衣装のこと。
読み方は「しにしょうぞく」で、別名「白帷子(しろかたびら)」といいます。
死装束は、あの世に逝くための正装ともいえる、いわば「旅立ちの装い」。
魂が安息の地に行くには、清らかな格好で…という古くから伝わる風習が、今もなお受け継がれているのです。
宗派や遺族の意向によっては死装束を着用しないケースもあり、必ずしも故人が着るとは限りません。
死装束は誰が選ぶ?
一般的に死装束は葬儀社が用意しますが、生前に故人が残した要望や、遺族の希望があれば相談が可能です。
葬儀社は、故人や遺族の要望を汲み取ったうえで提案してくれます。
もし、故人のお気に入りの服や、生前に希望していたものがあれば、葬儀社に早めに伝えましょう。
素材やデザインによっては、死装束として採用できないケースもあるため、注意が必要です。
死装束は誰が着せる?
一般的に、死装束は葬儀社や納棺師が着せることが多いでしょう。
専門的な知識が豊富なスタッフが、湯灌(ゆかん)で故人の体を清めた後、死装束に着替えさせてくれます。
傷や出血した箇所がある場合、湯かんのときに適切な処置を施し、目立たなくしてくれます。
一部では、故人の身支度を遺族が手伝うことも。
その場合は、専門スタッフの指示に従い、故人への感謝の気持ちを示しながら見送る準備をしましょう。
死装束はおしゃれ着でもOK?着させても良い服一覧
故人を見送る際、必ずしも白装束を身に着ける必要はありません。
- 仏衣(経帷子)
- 神衣
- エンディングドレス
- 着物
- 本人が好きな服装・私服
現在は、死装束の選択肢が増えているので、故人らしい衣装を選んで旅支度するのも良いでしょう。
ここでは、死装束で着せても良い服を紹介します。
仏衣(経帷子)
仏衣とは、いわゆる「白装束」のこと。
別名「経帷子(きょうかたびら)」と呼び「経=お経」「帷子=ひとえの着物」を意味します。
一般的な着物とは異なり、背の被(キセ)が逆で、右身頃にかかっているのが特徴。
背の被(キセ)以外にも、着用時の襟の合わせも逆です。
あの世とこの世は全てが真逆になるとされたことから、故人があの世に行っても困らないようにという祈りが込められているのだとか。
また、仏衣には玉止めがありません。
玉止めとは糸の結び目のことで、陽世への執着を手放し、新たな世界に進めるように…という意味が込められています。
神衣
神衣は、神式で故人が着用する衣装。
「しんい」「かむい」と読み、仏式同様、着物を着ます。
男女で異なり、男性は狩衣の形をしたもの、女性は小袿(こうちぎ・こうちき)と呼ばれる衣装を着ます。
どちらも貴族が着用していた服とされ、格式の高い人がまとったとされる衣装です。
男女とも白色のシンプルなデザインで「穢がない状態で幽世に旅立ってほしい」という思いが込められています。
エンディングドレス
キリスト教では一般的な「エンディングドレス」も、故人が着る特別な衣装。
シンプルなものから、襟元にフリルやレースが施された華やかなデザインまでさまざまです。
日本の死装束は、故人が着用する人生最後の正装を指す一方で、キリスト教には「死装束」という概念がなく、服装の細かなルールがありません。
生前大事にしていた服を身にまとい、最後まで“その人らしさ”を大切にするのがキリスト教の考えなのでしょう。
着物
最近は、白装束に拘らず「その人らしい服装で旅立たせてあげたい」という方が増えています。
なかでも着物は、旅立ちに相応しい服装の1つ。
修行僧や巡礼者が白い着物を着用していることから、死装束として白色の和服を選ぶ人も増えてきました。
控えめなデザインで、シンプルな着物が多い傾向がありますが、白に拘らなくても問題ありません。
思い出が詰まった着物で、安らかな眠りにつく故人を見送りましょう。
本人が好きな服装・私服
本人が大好きだった私服を選ぶ遺族も増えています。
いつも通りの服装で旅立てたら、本人も安心してあの世に向かえそうですね。
とはいえ、あの世に向かうまでの道のりは長く、故人にとって孤独な日々が続くかもしれません。
故人がお気に入りの私服であれば、思い出とともに旅立てるので、寂しさが軽減するはずです。
私服を採用するときは、感謝の気持ちを込めて選んであげてくださいね。
死装束に適さない服とは?
死装束は、亡くなった際に着用する衣装ですが、適さない服装があるのを知っていますか?
昔に比べて選択肢は増えたものの、何でも良いわけではないのです。
ここでは、死装束に適さない服を紹介します。
プラスチックや金属がついた服
プラスチックや金属がついている服は、死装束には向きません。
以下で紹介する服装は、火葬の妨げになるからです。
- ジッパーがついた服
- ボタンがついた服(素材による)
- スパンコールやスタッズがついた服
- 革製品
これらの服は火葬時に燃えきらず、破片が遺骨に混ざって骨を傷つける恐れがあります。
革製品は燃えにくく、有害物質を発生することがあるので、葬儀会社から断られる可能性が高いでしょう。
治療痕や闘病生活の影響が見えてしまう服
死装束は、故人や遺族の希望で、私服や着物など選択肢が広がりました。
しかし、治療痕や闘病生活の影響が見える服装はタブーとされています。
- 細身の服:闘病により姿が変わっている可能性がある
- 透け感のある服:皮膚が透けるため、療痕が目立つことがある
死装束は、故人が安らかに旅立つための大事な正装です。
治療痕や闘病生活の影響が見える服は避け、ゆったりしたデザインや厚めの生地のものを選ぶと良いでしょう。
死装束の着せ方とは?襟を左前にするのはなぜ?
死装束を着せるときは、襟を左前にすることが鉄則です。
通常、甚平や着物を着るときは右前で着ますが、故人が着る場合は生前と逆向きになります。
「逆さ事」という考えを元に、昔から生と死を区別するためのものとされてきました。
死装束を着たときに、左側の襟が肌に触れている状態が左前です。
地域によっては、足袋を左右反対に履かせることもあったりと、死後と生前の世界が違うことを故人に知らせるための、大事なマナーとされてきました。
ただし、宗教や宗派によっては右前になる場合もあるので注意しましょう。
左前だと着物の柄が見えなくなる場合は、襟を生前と同じ向きで着せることもあります。
納棺時に死装束以外で身に着けるもの
故人を納棺する際は、死装束以外にも身に着けるものがあります。
宗教や宗派ごとに違いはあるものの、身に着ける小物には、見送る側のさまざまな思いが込められているのです。
ここでは、納棺時に死装束以外で身に着けるものを紹介します。
編笠
編笠は、帽子の役割を果たします。
新しい世界に向かうための装いとして、昔から用いられてきました。
編笠を深く被せると、故人の顔が見えづらくなるため、軽く頭に乗せる程度に留めるケースが多いでしょう。
葬儀社によっては、故人の顔が見えにくくなるため、編笠を使用しないこともあります。
天冠
頭に着ける三角の布を「天冠」と呼び、別名「三角頭巾」といいます
天冠は、神様の弟子になったことを示していますが、顔の印象が大きく変わってしまうことから、身に着けないケースも少なくありません。
その場合は、編笠に着けたり、次項で紹介する頭陀袋に入れたりして、違った方法であの世に持っていけるように配慮します。
頭陀袋
六文銭を入れる頭陀袋は、別名「銭袋」と呼ばれています。
頭陀袋は首から下げ、六文銭は三途の川を渡るときの運賃代として使用します。
葬儀では、火葬場のルールで棺の中に現金を入れることができません。
お札や硬貨は入れず、印刷された紙を頭陀袋に入れて故人に持たせます。
手甲
手甲とは、手に付ける装具のことです。
日差しを避けたり、汗を拭ったりするために身に着けるもので、白装束の一部として用いられています。
素材は布で作られていることが多く、あの世までの長旅をサポートします。
手の甲を守る大事な小物なので、白装束の一つとして欠かせません。
ただし、故人の私服など遺族が用意した服を着用する場合は、手甲を着けないこともあります。
脚絆
脚絆は膝当ての役割を果たし、死装束の一部として用いられています。
もともとは、仕事のときに脛を怪我から守ったり、血流が滞るのを防いだりする目的で江戸時代から使われていたそうです。
古来からある日本の習わしの一つとして、今もなお受け継がれています。
数珠
数珠は、故人が生前使っていたものを棺に入れます。
昔から数珠は「見送る側の気持ちを落ち着かせ、心残りを軽減する」といわれてきました。
また、煩悩を浄めて仏に帰依するためのものとされ、持ち主の分身とも捉えられています。
数珠の素材によっては燃えにくいものもあるため、棺に入れる際は、あらかじめ葬儀会社に確認しておきましょう。
足袋
足袋は靴下の役割を果たし、一般的には白足袋を履きます。
死後硬直した遺体は足袋を履かせにくく、簡単に身支度ができるように開口部が広めに作られているのが特徴です。
快適な旅ができるように、足元まで身支度を整えます。
草履
草履には、靴の役目があります。
足袋のみでは、あの世までの長い道のりに不安が残ります。
草履には「どんな道でもしっかりと歩けるように」という、安全に目的地まで到着してもらうための願いが込められているのです。
杖
杖は、無事に旅を終えられるように添えるもの。
困難な道のりであっても、最後まで辿り着けるように…という意味が込められており、故人と棺の内側に納めます。
火葬時に燃え残りがないよう、棺には木製の杖を入れるのが一般的です。
死装束に関する注意点
死装束において、ひと昔前は白装束が一般的とされていました。
しかし、現在はさまざまな選択ができるようになったが故に、トラブルを引き起こすことも。
ここでは、死装束に関する注意点を紹介します。
宗教や宗派によって相応しい死装束が変わる
葬式はさまざまな形で執り行われますが、魂の行方や死後の世界観など、宗教や宗派によって葬儀に対する考え方は異なります。
必ずしも、死装束が必要だとは限らないのです。
現在は、葬儀に対する考え方が多様化しているため、葬式を執り行ううえでの選択肢が増えました。
しかし、遺族の意向を受け入れてもらえないケースもあるため、死装束の希望がある場合は葬儀社に確認しましょう。
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納棺に適した素材か確認する
死装束は、納棺に適した素材かどうかも重要なポイントです。
火葬する際の妨げになる可能性があるからです。
特に、夫婦のどちらかが亡くなった場合、結婚指輪を棺に入れたいと考える人は少なくありません。
しかし、指輪を含めた金属性のアイテムは燃えないため、棺に入れられないのです。
また、プラスチックも燃えにくいため、納棺には相応しくありません。
棺に入れる際は、あらかじめ葬儀社に確認しておくと安心です。
選ぶときは故人に着させやすいかも考える
死装束を選ぶときは、故人に着せやすい服を選びましょう。
死後硬直によって、扱いにくくなっていることを考慮する必要があるためです。
着させやすい服を、いくつかまとめました。
- 伸縮性のあるもの
- ゆったりとしたデザインのもの
- 柔らかい素材のもの
このような服は、死後硬直した遺体でも着せやすく、スムーズに身支度を整えられます。
生前、故人がよく着ていた服やお気に入りのものであっても、着用が難しいケースがあるため、あらかじめ葬儀社に確認しましょう。
死装束の他に納棺しても良いもの
葬儀は、故人との最後のお別れです。
だからこそ、故人の好きなものや思い出の品を入れて、温かい気持ちでお見送りしたい…という人も多いのではないでしょうか。
ここでは、死装束の他に納棺しても良いものを紹介します。
花
故人との最後のお別れには、花を添えると良いでしょう。
亡くなった人に添える花として、菊の花や胡蝶蘭のイメージがあるかもしれません。
しかし、ここで添える花は、生前好きだった花や、故人のイメージにぴったりの花がおすすめです。
ただし、色の濃い花は火葬後の骨に色がうつる場合があるため、色が淡い花を添えて故人の最後を華やかに飾りましょう。
手紙や寄せ書き
死装束以外に棺に入れるものとして、手紙もおすすめです。
生前、故人に言えなかったことはありませんか?
手紙には、故人へ言えずにいたことや、感謝の気持ちを綴ると良いでしょう。
会社や複数の人と一緒に贈る場合は、色紙に寄せ書きにするのも一つの方法です。
故人への最後の別れを文字にのせて、棺に入れましょう。
故人の写真
納棺する際、故人の写真を入れる人も少なくありません。
写真を入れることで、故人との別れをより深くできるメリットがあります。
ただし、まだ生きている人が写っている写真は控えたほうが無難でしょう。
写真が燃えることに抵抗を感じる人もいるため、注意が必要です。
あなたが故人の家族でない場合は、必ず遺族の許可を取ってから写真を入れるようにしましょう。
お菓子
故人がよく食べていたお菓子を棺に入れるのも良いでしょう。
なかでも、小袋でかさばらないものがおすすめです。
大きいものや、包装の状態によっては受け入れてもらえないケースがあります。
かさばらないものや、燃えにくいものは避けましょう。
燃えにくい梱包のお菓子を棺に入れたい場合は、中身を燃えやすい容器に入れ替えるなどして、火葬の妨げにならないように注意が必要です。
死装束とは故人が身に着ける衣装のこと。着せ方や宗派別のマナーにご注意を
今回は、死装束に込められた意味や、着せ方について紹介しました。
死装束とは故人が着用する衣装で、新しい世界に向かうための正装です。
故人に死後と生前が違う世界であることを認識してもらうためにも、逆さ事を守り、マナーを理解したうえで適切な方法で進めていくことが大切です。
葬式は、故人との最後のお別れになります。
残り少ない時間を大切にしながら、後悔や失礼のないように、最後まで温かい気持ちで見送りましょう。
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