神式の葬儀“神葬祭”の流れとは?通夜や告別式のマナー・作法も解説
「神式の葬儀は、どのように執り行われる?」「神葬祭の基本的な葬儀マナーを知っておきたい」という人もいるのではないでしょうか?
万が一のときに慌てないためにも、基本的な流れは知っておきたいものです。
この記事では神葬祭の流れや、通夜・告別式のマナーなどについて解説します。
神道における死生観と葬儀を行う目的
仏教は輪廻転生を繰り返し、故人は新しく生まれ変わると考えられているのに対し、神道は神葬祭で穢れを祓い清め、やがて家や子孫を守る祖霊になるとされています。
まずは、神道における死生観と葬儀を行う目的について解説します。
神道では故人が氏神になるとされている
日本古来の宗教である神道は、祖先を崇敬する信仰がベースになっています。
祖先は自分たちの氏神であり、亡くなった人は家や子孫を守る存在になると考えられているのです。
仏式の葬儀は、故人の冥福を祈り、極楽浄土に送り出すことを目的として執り行われます。
一方で神式の葬儀は、故人の霊を慰め、家の守護神になっていただくことを目的にしているのです。
葬儀=故人が穢れを祓い氏神になる儀式
神式の葬儀は、故人が穢れを祓い氏神になる儀式でもあります。
神道において「死」は穢れであり、生命力が衰えた悪い状態であると考えられています。
そのため、故人を祀って不幸による穢れを祓い清めることで、穢れのない良い状態の日常生活に戻すことを目的としているのです。
故人の霊は子孫からのまつりを受け、長い時間をかけて浄化されます。
そして、やがて神様となって家族の繁栄を見守る存在になると考えられているのです。
神式の葬儀“神葬祭”の特徴丨仏式との違いは?
神式の葬儀“神葬祭”の特徴や、仏式との違いについて確認してみましょう。
五十日祭までは神棚封じを行う
神式の葬儀では、五十日祭までは神棚封じが行われます。
五十日祭とは、仏式の四十九日にあたる法要です。
この日を迎えるまで、神棚や祖霊舎の扉を閉めて、半紙などの白い紙を貼っておくことを神棚封じと呼びます。
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お経ではなく祭詞(祝詞)を唱える
仏教の葬儀ではお坊さんがお経を唱えますが、神式では宮司が祭詞(祝詞)を唱えます。
祝詞とは、神をまつり、神に祈るときに唱えるもので、結婚式のときなどにもあげられるものです。
葬儀の場では「祭詞(さいし)」や「しのびごと」といいます。
宮司は故人の生い立ちや略歴を述べ、祖先とともに子孫繁栄を祈り、家を守ってくださるように祭詞を読み上げます。
焼香ではなく玉串奉奠(たまぐしほうてん)を行う
仏式では焼香を行うのに対して、神式では玉串奉奠(たまぐしほうてん)を行います。
玉串奉奠のやり方は以下の通りです。
【玉串奉奠のやり方】
- 右手で枝を、左手で葉を持つように、両手で玉串を受け取る
- 玉串台(祭壇)の前に進む
- 一礼する
- 正面に立てるように玉串を持つ
- 時計回りに回し、枝側を祭壇に向けて玉串台に捧げる
- 二礼・二拍手・一礼を行う
玉串とは、榊の枝に紙垂(しで)と呼ばれる白い紙片をつけたものです。
玉串奉奠の際には、神道独自の作法である二礼・二拍手・一礼を行います。
神社でお参りする際には手を叩きますが、葬儀では「しのび手」で音が出ないように気をつけましょう。
戒名ではなく諡(おくりな)が与えられる
神式の葬儀では、故人に戒名ではなく諡(おくりな)が与えられます。
多くの仏式では仏の弟子になった証として、僧侶から故人の人柄や生涯にちなんだ戒名を授けてもらいます。
一方で神式は、名前は神様や親から与えられた大切なものと考えられているため、生前の名前がそのまま引き継がれるのです。
諡は名前の後ろにつけられ、基本的に「名前+諡+命(のみこと)」で構成されます。
年齢によって変わりますが、成人男性であれば大人(うし)、成人女性であれば刀自(とじ)などが使われます。
たとえば、成人男性の山田太郎さんの場合、諡は「山田太郎大人命」になるでしょう。
葬儀前と終了後に手水の儀を行う
神式の葬式では、葬儀前と終了後に手水(ちょうず)の儀を行う場合があります。
※葬祭式場で行う場合は、手水を用意することは少ないようです
手水の儀とは、参列者の心身を清める儀式のこと。
基本的な作法を以下でご紹介します。
- まず柄杓で水をすくい、左手、右手の順に3分の1ほど水をかけます。
- 次に柄杓の水を左手の平に注いで、軽く口をすすぎ、柄杓を元の位置に戻して、口元と手を半紙やハンカチなどで拭きましょう。
※手水の儀を行うか否か、どんな作法で行うかは地域によって異なります。依頼予定の葬儀社にご相談ください
神式葬儀“神葬祭”の流れ丨ご逝去から納棺まで
帰幽奉告・神棚封じ
神式では、亡くなると最初に帰幽奉告を行います。
神道では「逝去」を「帰幽」と呼び、帰幽奉告とは神棚と祖霊舎に帰幽したことを奉告する儀式です。
帰幽奉告の際には、神棚や祖霊舎に穢れが及ばないよう、扉を閉じて白い半紙を貼り神棚封じを行います。
病気平癒などを祈願した神社があれば、その神社に喪主の代わりとなる代参を派遣するか、遠くから礼拝する遥拝を行い、祈願を解いて、産王神社に帰幽を奉告してください。
葬儀社や形式などの決定
神式葬儀を行う場合は、葬儀社や形式などを決めましょう。
まず、葬儀を執り行うにあたり、斎主、副斎主、祭員、令人(雅楽を奏でる人)などを委嘱します。
次に、幣帛(進物)や神醸(食物)、宝事その他、またそれぞれどれくらいの量を用意するかなどを決定し、霊璽(仏教における位牌に相当するもの)、墓誌、銘旗、墓標などの揮毫を依頼してください。
仏式葬儀は葬祭ホール、斎場、自宅、寺院など、比較的さまざまな場所で葬式を執り行うことができます。
しかし神式の場合は、葬祭ホールや斎場、自宅では可能ですが、神社で行うことはありません。
枕直しの儀
故人の頭を北枕、もしくは部屋の上位(向かって右側)にして寝かせ、顔を白い布で覆ってください。
枕元には枕屏風を立て、守り刀を置き、灯火をつけましょう。
悪霊から故人を守るとされる守り刀は、枕元に設置した小案(小さなテーブル) に、刃がご遺体の逆向きになるように置いてください。
ご遺体の前に案(白木八足のテーブル)を設置して、生醸(洗米、塩、水)や、故人が生前に好きだった常饌(食物)などを供えます。
納棺の儀
ご遺体を清めたら、納棺の儀を執り行います。
神式の納棺の儀では、なるべく早く納棺し、正寝(表座敷)に移動して柩前を装飾し、髏(食物) を供えて拝礼します。
死装束は、男性の場合だと白丁と烏帽子に笏を持ち、女性は白の小袿に扇を持ちますが、着せないこともあるので、葬儀社などに確認しましょう。
神式葬儀“神葬祭”の流れ丨一日目
通夜祭(つやさい)
通夜祭(つやさい)と遷霊祭(せんれいさい)は、葬儀を行うまでの間、故人に生前同様の礼を尽くして奉仕する大切な儀式です。
神式の通夜祭は、仏式の通夜にあたります。
立派な葬儀では伶人(雅楽の奏者)が入ることもありますが、一般的な葬儀だとCDなどで雅楽を流しながら神職による祭詞が奏上されます。
祭詞が奏上されている間に、遺族や参列者は玉串を奉って拝礼するのが基本的な流れです。
遷霊祭(せんれいさい)
遷霊祭(せんれいさい)は、出棺前に故人の霊を霊璽(れいじ)に移すための儀式で、御霊移し(みたまうつし)とも呼ばれます。
魂が動くとされる夜間に執り行われるのが本式で、場内の明かりは全て消して行うのが一般的です。
霊璽は故人を家で祀る際の依り代となるもので、木主や笏などが用いられますが、鏡や故人の遺品などが使われることもあります。
霊璽は五十日祭、もしくは百日祭や一年祭の後に祖霊舎に移してください。
神式葬儀“神葬祭”の流れ丨二日目
葬場祭(そうじょうさい)
神式の葬場祭(そうじょうさい)は、告別式にあたる儀式です。
神式葬儀のメインとなり、以下のような流れで執り行われます。
【葬場祭の流れ】
- 徐人(楽士)、参列者、会葬者、関係者が着席
- 斎主、副斎主、祭員が着席
- 喪主、家族、親族が着席
- 斎主が一拝し、一同これにならう
- 祭員が饌(せん※食物)を供え、次に幣帛(へいはく)を供える
→この間、伶人楽を奏す - 斎主が祭詞を唱える
→この問、参列者は軽く頭を下げる - 誄歌(るいか※故人を追慕する歌)を奉奏
- 誄詞、弔辞、弔詩歌、弔電等を奏上する場合は誄歌奉奏の次に行う
- 斎主が玉串拝礼
→副斎主以下祭員は列拝 - 喪主、家族、親族、他参列者の順に玉串拝礼
- 副斎主以下祭員が幣帛、饌(せん※食物)を撤する
→この間、伶人楽を奏す - 斎主一拝し、一同これにならう
- 斎主退場
- 弔電紹介、喪主挨拶など
- ご出棺
参照:葬儀概論四討第8章「神葬祭」P.266
饌には原則として、洗米、酒、餅、海魚、川魚、野鳥(水魚)、海菜、野菜、果物、菓子、塩、水が供えられます。
榊、生花、造花は、柩の前面左右に並べてください。
※地域によって流れや作法は異なります
火葬祭(かそうさい)
葬場祭のあとに行われる火葬祭(かそうさい)は、火葬に先立ち火葬場で執り行われる儀式です。
神官が祓い清め、祭詞を奏上し、参列者は玉串を捧げて故人に最期の別れを告げます。
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埋葬祭(まいそうさい)
神式の埋葬祭(まいそうさい)は、遺骨を墓地に埋葬する前に行われる儀式です。
墓に納骨し、銘旗(故人の名前や職名などを記した旗)や花などを供えます。
帰家祭(きかさい)・十日祭・直会(なおらい)
火葬または納骨が終わって、家に帰って塩や手水で清め、霊璽の前で無事に葬儀が終了したことを奉告する儀式を帰家祭といいます。
斎主が守護神に祭詞を奏上し、斎主、喪主、遺族の順に玉串奉奠を行います。
このあと、神職やお世話になった人を招いて行われる宴が、直会(なおらい)の儀です。
帰家祭と十日祭は繰上初七日、直会は精進落としの会食をイメージすると分かりやすいかもしれません。
神式の葬儀後に行う法要
霊前祭:百か日までに行う法要
- 翌日祭(葬儀の翌日に行う)
- 十日祭
- 二十日祭
- 三十日祭
- 四十日祭
- 五十日祭
- 百日祭
五十日祭はいわゆる「四十九日」と同様の法要で、この日をもって故人が正式に氏神(守護神)になったとみなされます。
忌明けにあたるため、親族や友人を呼んで盛大に儀式を行うご家庭が多いようです。
清祓(きよはらい)の儀:五十日祭の翌日に行う
清祓(きよはらい)の儀は、五十日祭の翌日に行われる儀式です。
百日祭、一年祭の翌日に行われることもあります。
清祓の儀を終えると、神社への拝礼もいつもと同じようにできます。
神棚と祖霊舎の扉の前に貼った半紙などの白い紙を取り除き、合祀しましょう。
式年祭:年忌法要
神道の式年祭は、仏教における年忌法要にあたります。
- 一年祭
- 三年祭
- 五年祭
- 十年祭
- 五十年祭
式年祭では、祭詞の奏上と玉串奉奠が行われたあと、会食に進みます。
一年祭と三年祭は、家族だけでなく故人の友人や知人を招いて大きな規模で行われることが多いですが、その後は徐々に規模が小さくなるのが一般的です。
亡くなって満50年目を迎える五十年祭をもって式年祭は終わりとなり、仏式葬儀の弔い上げにあたります。
ただし、地域差や神社によって考え方の違いなどもあるでしょう。
神式葬儀の作法やマナー
服装・髪型
神式葬儀における服装や髪型のマナーは、基本的に仏式葬儀に参列するときと変わりません。
通夜祭の場合、男性はダークスーツ、女性は地味なカラーのスーツなどを着用しましょう。
ただし、通夜祭にしか参列できないときは、男女ともに喪服を着る人が多いようです。
清潔感のある髪型に整え、殺生を連想させる皮革類や毛皮、華美なメイクやアクセサリーなどは控えます。
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香典の相場・香典袋の表書き
神式葬儀での香典の相場は、仏式と同じくらいと考えましょう。
故人との関係や年齢によっても変わりますが、友人であれば5,000円〜10,000円が目安です。
また、神式では香典袋のことを「不祝儀袋」といいます。
蓮の花が描かれたものは仏式用、百合の花が描かれたものは神式用なので、白黒もしくは双銀の水引が用いられたものを使用してください。
不祝儀袋の表書きは「御榊料」「御玉串料」「御神前」「御霊前」などにしましょう。
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拝礼
神式の葬儀では、拝礼の作法に気をつけましょう。
玉串奉奠の際には、まず神職に一礼し、神前(玉串案前)に一礼します。
そして玉串を供えたあと、神社で参拝するときのように、二礼・二拍手・一礼をしてください。
ただし拍手の際は、葬儀の場なので音をたてない「しのび手」で行いましょう。
お悔やみの言葉
神式の葬儀でお悔やみを伝えるときは、仏教用語である「冥福」「成仏」「供養」などの言葉は使いません。
神道では、故人は命を神様に返し、その御霊は家や子孫を守る存在になると考えられているため「平安」「拝礼」などがお悔やみの言葉となります。
そのため「御霊のご平安をお祈りします」「心より拝礼させていただきます」などの言葉で、気持ちを伝えるようにしましょう。
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日本古来の宗教である神道は、人々の暮らしの中から生まれ、長い年月をかけて今のかたちになりました。
「神式の葬儀を考えている」「もしものときに慌てないようにしたい」という場合は、神葬祭の特徴や流れ、基本的な作法を心得ておきたいですね。
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【記事全体参考文献】
葬儀概論 四討 第8章 宗教儀礼「神葬祭」P.264~267
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