点滴のみの余命は?ご飯が食べれない終末期の高齢者はどれくらい生きられる?
終末期を迎えた高齢者は、ご飯が食べれないため、経口摂取以外の方法で栄養を摂る必要があります。
なかでも、点滴は高齢者への負担が少ない治療の1つですが、この治療法ではどのくらいの余命なのか気になりますよね。
この記事では、点滴のみの余命や、ご飯が食べれない終末期の高齢者がどのくらい生きられるのかについて解説します。
ご飯が食べれない高齢者の点滴だけでの余命は?
ご飯が食べれない高齢者にとって点滴は、必要な栄養素を供給する重要な役割を果たすもの。
食事ができずに水のみで生活した場合の余命は約2週間〜3週間、水を飲まずに過ごした場合は約3日〜4日と言われています。
一方で、末梢静脈栄養を用いた場合の余命は、平均60日間という調査結果が出ています。
カテーテル(直径約2mmの細長い管のこと)を用いた経管栄養であれば、平均余命が827日間と、点滴の方法によって生存期間に大きな差が出るのです。
参考:老年医学会雑誌第44巻2号「高齢者終末期における人工栄養に関する調査」
ご飯が食べれない高齢者への点滴は余命を延ばすのに有効?
点滴はご飯が食べれない高齢患者の余命を延ばすのに、必ずしも効果的とは限りません。
終末期の点滴は、以下の症状が表れる可能性があります。
- むくみ:歩けなくなる
- 胸水(きょうすい):呼吸困難になる
- 腹水(ふくすい):お腹が張るとさらに食事が取れなくなる
一時的に脱水症状を防ぐために、有効的な治療方法の1つとして取り入れられます。
死期が近くても、明確な目的や事情があるなら、最小限の点滴で処置するのもよいでしょう。
治療方法を決める時は、患者の意思や状況を考慮したうえで、十分な検討が必要です。
ご飯が食べれない高齢者に点滴をするメリット
ご飯が食べれない高齢者にとって点滴は、健康を取り戻すうえでの重要な役割を担うもの。
消化管が機能していない場合に用いられ、高齢患者の生命維持に大きく関わる治療です。
ここでは、ご飯が食べれない高齢患者に点滴するメリットを紹介します。
誤嚥(ごえん)を防げる
点滴を用いることで誤嚥(ごえん)のリスクを下げられます。
誤嚥とは、飲み込んだ食べ物が誤って気管に入り、肺に到達することをいいます。
これを繰り返すと、誤嚥性肺炎を引き起こす可能性があり、非常に危険です。
高齢者は免疫力が弱く重症化しやすいため、最悪な場合は呼吸困難に陥ることもあるでしょう。
人工呼吸管理が必要になるケースもあり、点滴は高齢患者の苦しみを和らげる重要な役割を果たすのです。
患者への負担が少ない
点滴は、高齢患者の負担が少ないのも大きなメリットとなります。
手術せずに取り入れられる治療法で、血管に針を入れるだけで栄養補給が可能です。
点滴は「中心静脈栄養」と「末梢静脈栄養」の2種類あり、末梢静脈栄養は医療従事者がいれば簡単に処置できます。
ご飯が食べれない高齢患者にとって「末梢静脈栄養」は、栄養状態の維持や高めるうえで、違和感や不快感が少ない方法だといえるでしょう。
「中心静脈栄養」は後ほど詳しく紹介しますが、実施するには医師がいる必要があります。
ご飯が食べれない高齢者に点滴をするデメリット
点滴は、ご飯が食べれない高齢患者にとって体への負担が少ない治療法です。
しかし、心身のコンディションを悪化させる恐れもあり、高齢患者にとっては見過ごせない点がいくつかあります。
次にご飯が食べれない高齢患者に点滴するデメリットを紹介します。
感染症を引き起こす可能性がある
ご飯が食べれない高齢者が点滴すると、感染症を引き起こす可能性があります。
高齢患者は免疫力が低下していることから、血管や皮膚に炎症を起こすケースがあり、最悪の場合は敗血症になることも。
敗血症は発熱や発汗などの症状がありますが、重症化すると臓器不全や敗血症ショックで死に至るケースもあり危険です。
延命治療として点滴を選択する人も多いですが、感染症にかかるリスクが高いので注意が必要です。
栄養摂取の効率は悪い
ご飯が食べれない高齢患者は、食事から十分なエネルギーを体に取り込めず、点滴を選択するケースも少なくありません。
「末梢点滴」を選択した場合、1日に1,000カロリー程度のエネルギー摂取が可能です。
しかし、65歳〜74歳の男性が必要な1日のエネルギー量は2,400カロリー、女性は1,850カロリーといわれ、末梢点滴だけでは十分な栄養を供給しきれません。
一時的に栄養補給する分には向いていますが、長期的な点滴の利用は、心身のコンディションを悪化させる原因になるのです。
終末期だと苦痛を与えかねない
終末期の高齢患者に点滴を用いると体がむくみやすく、苦痛が増す可能性があります。
血管内に水分を保持できない高齢患者は、臓器がうまく機能せず、尿として外に排出されにくいため、むくみに繋がるのです。
この場合、本人や家族が点滴を希望しても、医師から点滴中止の判断を下される可能性があります。
状況によっては苦痛を長引かせるため、医師の指示に従い、患者に寄り添いながら心身のケアに努めましょう。
患者が痛がり点滴を外すこともある
高齢者のなかには、点滴を嫌がる人もいます。
手足が自由に動かせなくなったり、痛みや不快感があったりと、治療法によってさまざまな苦痛が生じるからです。
なかには、点滴を自ら抜いてしまう高齢者もいます。
しかし、点滴の抜き取りを繰り返す行為は非常に危険です。
血管壁が傷つく恐れがあり、出血や炎症を引き起こす可能性があります。
点滴治療を行う際は家族の同意の元、手にミトンのようなものをはめるなどして行動制限をかけることも珍しくないのです。
ご飯が食べれない高齢者に対する末梢点滴以外の治療法
ご飯が食べれない高齢患者に対する栄養補給の方法は、いくつかあります。
より患者に合った治療を選択し、高齢者が苦痛を感じにくい手段を選びましょう。
こちらでは、ご飯が食べれない高齢者に対する、末梢点滴以外の治療法を紹介します。
中心静脈栄養
中心静脈栄養とは、心臓付近の太い静脈に点滴を用いて栄養を摂取する方法です。
消化器官の機能が低下している・ご飯が食べれない人に適しています。
1日最大で2,500カロリーの栄養を投与でき、末梢点滴に比べて効率よくエネルギーを摂取できます。
外出や入浴にも制限がなく、日常生活に大きな影響が出にくいのも特徴です。
その一方で、カテーテル挿入部から感染症を引き起こす場合も。
また、体が栄養を必要としない老衰状態で栄養補給すると、体に大きな負担がかかる可能性もあります。
経鼻経管栄養
経鼻経管栄養とは、一時的に経口摂取が困難な患者が鼻から胃・腸にかけ栄養摂取するための治療法です。
短期間で再び口からの摂取ができる人に適しており、合併症のリスクが少なく、胃や腸の機能が維持できます。
自宅での治療が可能なので、療養生活の円滑化に繋がるでしょう。
一方で、嘔吐や下痢、便秘などの消化器症状を引き起こすこともあります。
鼻からチューブを入れるため、見た目が気になる人も多く、違和感や痛みを訴える患者も少なくありません。
2週間に1回チューブの交換が必要で、本人もケアする側も負担になります。
腸ろう
腸ろうとは腹部に小さな穴を開け、小腸までカテーテルを通して栄養補給する口からの摂取が困難な患者に適した方法です。
次項で紹介する「胃ろう」が困難な高齢患者に適しており、病気で胃を切除した人でも腸が正常に動いている人には向いています。
腹部に開けた穴は衣類で隠れるため、日常生活が送りやすいのが特徴。
胃ろうと比較すると逆流する恐れが低く、健康状態の回復が期待できるのもメリットです。
しかし、胃ろうと比べて腸ろうは、栄養注入に時間がかかります。
人手不足の施設では、受け入れてもらえないケースも少なくありません。
胃ろう
胃ろうは、手術によって腹部に開けられた穴にカテーテルを通し、胃に栄養剤を注入する治療法です。
こちらも経口摂取が難しい患者に行われます。
- ボタン型バルーン
- ボタン型バンパー
- チューブ型バルーン
- チューブ型バンパー
これら4種類から、患者にとって最適な方法を選びます。
胃や腸の機能を活かして栄養補給が可能なうえに、自己管理がしやすいのが特徴です。
周囲からバレにくく、生活の質を落とさずに日常が送れるでしょう。
一方で、胃ろうはバルーン型だと約1~2か月に1回、バンパー型では約半年に1回カテーテルの交換が必要です。
カテーテルの交換費や手間がかかるため、精神面・経済面での負担が大きくなります。
ご飯を食べれない人が点滴のみで生きられるのは約60日間。終末期の点滴は苦しむ恐れがある
今回は、ご飯が食べれない終末期の高齢患者の余命について紹介しました。
点滴のみでの余命は約60日間ですが、終末期の高齢患者にとっては苦痛に感じるかもしれません。
大切なのは、本人が認知症になる前に治療について家族と話し合うこと。
それぞれの特徴を理解し、最良の治療は何かを考えることが重要です。
ゲートハウスでは、ご家族の最期を悔いなく見送るためのお手伝いをしています。
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