老衰とは?死ぬ直前に表れる症状やサイン・死亡までの期間にできることを解説
多くの人の死因でもある老衰。
家族に気になる症状が出ているけれど、そもそも老衰とはどんなものなのか、どんな症状が表れるのかを知らないという方も多いのではないでしょうか?
この記事では老衰の意味や症状、死亡までの期間にできることを解説します。
老衰とは?定義・意味を簡単に説明
老衰とは、加齢による身体機能の低下が原因で衰弱すること、衰弱した状態を意味する言葉です。
高齢化により使用頻度が高まっている言葉で、この状態になると日常生活を送るのが難しくなり、最終的には生命活動の維持もできなくなってしまいます。
また、死因としての「老衰」は、厚生労働省では以下のように定義されています。
老衰が死因となるのは「他に記載すべき死亡の原因がない」ケースのみです。
そのため、老衰が原因でほかの病気を発症し亡くなった場合や、病気や事故で亡くなった場合は、「老衰死(自然死)」とはなりません。
何歳で亡くなると老衰死だと判断される?
何歳以上で亡くなると老衰死なのかは、明確に決まっていないのが現状です。
厚生労働省の定義の中には「高齢者」との記載がありますが、ハッキリとした年齢は明記されていません。
さらに、老衰死とするかどうかの判断も医師の考え方によって変わるため、年齢に関する明確な基準はないといえるでしょう。
一般的には90歳以上、または平均寿命以上(男性:81歳、女性:87歳)で、ほかに死亡の原因がない場合に老衰死と診断されることが多いようです。
老衰の始まりはどんな症状が出る?前兆やサインとは?
加齢による身体の衰弱を意味する「老衰」。
では、この老衰が始まる際には、どのような症状が出るのでしょうか。
次は、老衰の初期に出る症状を、前兆・サインと共に紹介します。
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筋肉量の減少(サルコペニア)
老衰の始まりに出ると考えられている症状が「筋肉量の減少(サルコペニア)」です。
加齢により筋肉量と筋力が減少する症状で、前兆やサインとして以下の現象が表れます。
- 転びやすくなる
- 握力が落ちる
- 歩くスピードが遅くなる
ほかにも「ふくらはぎや手首が細くなる」「手すりを使わないと階段を登れない」「疲れやすい」といった症状が出ることがあります。
原因と考えられているのは、運動不足や栄養障害、ホルモンの変化、酸化ストレスなど。
症状が出ると日常生活に支障をきたすことが多く、転倒による骨折のリスクも高まるため、気づいたら早めに対策しましょう。
生活機能の減少(フレイル)
昨今、耳にすることの増えた「生活機能の減少(フレイル)」も、老衰の始まりによく表れる症状の1つです。
フレイルとは、加齢により心身が衰えた状態を表し、健常な状態と要介護の中間に位置する段階と考えられています。
主な前兆やサインはこちらの3つ。
- 体重の減少
- 食べる量が少なくなる
- 認知機能の低下
体重や食事量の減少などの身体的な変化だけでなく、認知機能の低下や抑うつといった精神的な症状も表れるのが特徴です。
適切な治療や予防を行えば、進行を遅らせることができますが、悪化すると、生活機能障害や要介護状態になってしまいます。
原因は、身体機能の低下や精神的なストレス、社会的な孤立などさまざまです。
老衰で死ぬ直前の症状とは?
老衰で死ぬ直前には、特定の症状が表れやすいです。
個人差があるため確実に表れるとは限りませんが、知っておくと心の準備をする際に役立つので、ぜひ覚えておきましょう。
次は、老衰で死ぬ直前の症状を紹介します。
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食事がとれなくなる
老衰で亡くなる直前は、食事がとれなくなります。
内蔵機能の低下により栄養や水分の処理が難しくなるため、食事が困難になるのです。
また、老衰による意識障害も食事がとれなくなる原因の1つです。
意識障害が進行すると、食べ物をうまく飲み込めなくなるため、食事という行為そのものが難しくなります。
寝たきりになる
「寝たきり」も、亡くなる直前の症状の1つです。
老衰状態では、脳機能の低下によって起きている時間が短くなります。
加えて、サルコペニアやフレイルによる運動機能の低下もあるため、1日を布団やベッドで過ごす寝たきりの状態になるのです。
最終的には1日のほとんどを寝て過ごすようになるため、このような状態になった場合には心の準備をしておくと良いでしょう。
中治り現象が起こる
亡くなる直前に起こる症状の1つが「中治り現象」です。
中治り現象とは、死期が近い人が一時的に元気になること。
老衰関連であれば「身体機能が低下していたのに、急に身体が動くようになった」「食事ができなくなったのに、食べ物や水を欲しがった」などの現象が該当します。
必ず起こるものではありませんが、比較的よくある現象といわれているので、これを機に覚えておきましょう。
意識が混濁する
「意識の混濁」も、老衰で亡くなる直前に出る症状です。
死期が近くなると脳機能の低下が進み、意識がぼんやりとした状態になります。
人によっては急に興奮する、幻聴や幻覚が起こるなどの症状が出る場合も。
意識の混濁自体は終末期の方によく表れる症状ですが、あまりにも気になる場合は医師に相談することをおすすめします。
呼吸音が変化する
死期が近い人は、呼吸音が「ゴロゴロ・ゼーゼー」という音に変化するといわれています。
これは「死前喘鳴(しぜんぜんめい)」と呼ばれる現象で、喉の筋肉が弱くなることで起こるとされています。
こちらも、すべての人に起こるものではありませんが、死期が近い人によく起こる現象なのでぜひ覚えておきましょう。
老衰のサインが出てから死亡するまでの期間は?
老衰のサインが出てから死亡するまでの期間は、症状や人によってさまざまです。
しかし、サインの発現から死亡までの大まかな目安は、2つほど存在します。
1つ目は、食事がとれない状態になってからの目安。
こちらは、延命治療をしなければ1週間程度で老衰死に至るといわれています。
2つ目が死前喘鳴が始まってからの目安です。
ほかの病気や、事故で起こる死前喘鳴も含んだ目安ですが、この現象が始まってからおおよそ48時間以内に亡くなることが多いといわれています。
老衰で死亡するまでの期間に家族ができること
老衰の症状が出ている家族のために、何かしたいと思っている方も多いのではないでしょうか?
できれば、残りの時間をより快適に過ごせるようにしてあげたいですよね。
ここからは、老衰で死亡するまでの期間に家族ができることを紹介します。
できる限りそばにいて話しかける
残りの時間を少しでも落ち着いた気持ちで過ごして欲しいなら、可能な限りそばにいて、話しかけてあげましょう。
コミュニケーションを取るだけでも、孤独や不安を軽減できます。
お互いの心を癒すきっかけになるのもポイントです。
寝たきりや意識混濁の状態であっても声は届くので、ぜひ積極的に話しかけるようにしましょう。
歩きやすい環境を整える
歩きやすい環境を整えることも、家族ができることの1つです。
サルコペニアやフレイルの症状が出はじめると、転倒のリスクが大幅に高まります。
転倒してケガや骨折をしてしまうと寝たきりになりやすく、老衰がさらに進むこともあるため、できる範囲で環境を整えておきましょう。
具体的な対策としては滑りにくい床材の使用や障害物の除去、手すりの設置、整理整頓などがおすすめです。
身体や布団を清潔に保つ
老衰が進行するとお風呂に入ったり、トイレに行ったりするのが難しくなります。
この状態では感染症や床ずれを患うリスクが高くなるため、しっかりとにケアをして、身体や布団を清潔な状態に保つようにしましょう。
家族だけでのケアが難しい場合は、介護サービスの利用を検討することをおすすめします。
食事や飲み物を取りやすいものにする
食事の負担を減らすためにも、食べ物や飲み物は摂取しやすいものにしましょう。
老衰が進むと、飲み込む力や噛む力だけでなく、手や腕の力も落ちてしまいます。
普通の食事や水分補給が難しい場合は、食事や飲み物に一工夫加えてから出してみましょう。
介護食を用意したり、飲みやすい容器に入った飲料を用意したりするのが一般的です。
感謝を伝える
老衰の症状が出ている家族を持つ方にぜひ行って欲しいのが、感謝を伝えることです。
ストレートに感謝を伝えれば、伝えられた側はもちろん、伝えたご自身も清々しい気持ちになります。
わだかまりの解消や心のケアにも役立つでしょう。
少し恥ずかしいかもしれませんが、残された時間を気持ちよく過ごしてもらうためにも、感謝の言葉を伝えてみてはいかがでしょうか。
老衰で亡くなる前に備えておくこと
最後に、老衰で亡くなる前に備えておきたいことを紹介します。
多少の労力は必要ですが、しっかりと準備しておけばお別れの時間をゆっくりと過ごせるほか、本人の医療や葬儀、相続に関する希望も叶えやすくなるはずです。
不要なトラブルも防止できるので、ぜひ参考にしてみてください。
葬儀社を決める
家族が亡くなる前にぜひやっておきたいことが、葬儀社の決定です。
複数の会社に相談し、比較したうえで利用する葬儀社を決めておけば、適切な料金でお葬式を執り行えます。
また、残された家族の負担も減らせるほか、お別れの時間をゆっくりと過ごせるのもポイント。
縁起が悪いと考える人もいますが、多くのメリットがあるので、葬儀社選びは早いタイミングで済ませておくことをおすすめします。
葬儀の希望を話し合う
葬儀の希望を話し合うことも、家族や親族が老衰で亡くなる前にやっておきたいことの1つです。
希望を聞いたうえで葬儀社との相談や準備を進めれば、本人の思い描いた葬式を実現しやすくなります。
聞いておきたい内容は「葬儀の形式・規模」「参列して欲しい人」「費用」の3つ。
これらをしっかりと聞いてから準備を進めれば、後悔のない葬儀にできるでしょう。
また、葬儀の話題は気が引けるという場合には、エンディングノートを活用するのもおすすめです。
遺言書を作成する
老衰が進行する前にやっておきたいことが、遺言書の作成です。
相談しにくい内容ではありますが、作成してもらうだけでも遺産の相続がスムーズに行えるようになります。
家族間、親族間のトラブルも防げるので、一度作成についてを話し合っておきましょう。
また、直接お願いするのが難しい場合は、遺言書や終活の話題を意図的に出す、遺言書作成セミナーに一緒に参加するなど、遺言書を身近に感じられるような工夫をするのがおすすめです。
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延命治療の有無を確認する
延命治療を希望するかどうかは、元気なうちに確認するようにしましょう。
老衰が進み、心身の機能が大きく低下すると、病院で延命治療をしないと生命活動を維持できない状態になってしまいます。
このとき、延命治療をするかどうかを家族だけで決めてしまうと、本人の意思にそぐわない治療となってしまう可能性があります。
家族側の心理的・経済的負担になることもあるため、会話ができるうちに必ず確認するようにしてください。
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老衰とは高齢者の自然死のこと。前兆やサインを見逃さずに今できることを
老衰とは、加齢による身体機能の衰弱、または高齢者の自然死のことです。
老衰は徐々に進行するため、高齢の家族がいる方は、前兆やサインを見逃さないように、できる限り見守りながら過ごすことをおすすめします。
仮に老衰の症状が出ている場合は、悔いを残さないよう今できることは何か、しっかりと向き合って考えてみると良いでしょう。
また、葬儀に関する疑問を解決しておきたい、葬儀の準備を進めたい方は、家族葬のゲートハウスにお気軽にご相談ください。
知識と経験が豊富なスタッフが、迅速に対応致します。
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